中国が新年早々、行動を起こしています。
中国人民銀行は4日、中国人民銀行の預金準備率を100bp引き下げると発表しました。15日と25日に分けて実施し、それぞれ50bpずつ引き下げる方針。2回に分ける背景としては、2月5日の春節が挙げられます。
今回の措置により、大手銀の預金準備金利は13.5%、中小銀行は11.5%へ引き下げられる予定。預金準備率の引き下げで市中銀行が人民銀に預ける金額が減るため、1.5兆元(2,100億ドル)相当の流動性拡大につながる見通しです。なお2018年は1月に2017年9月に決定していた引き下げ分とは別に、4月、7月、10月と3回実施し、250bp引き下げていました。
預金準備率の引き下げとは別に、人民銀行は2日に中小企業向けの融資枠の定義を1社当たり50万元以下から1,000万元(146万ドル)以下へ引き上げていました。この措置により、4,000億〜7,000億元(最大1,020億ドル)の流動性拡大につながると試算されていたものです。
今回の預金準備率引き下げは、李克強首相が中国商工銀行などの大手銀の視察、並びに銀行保険監督管理委員会の当局者と会談の後で言及していました。李首相は中小企業支援に向け預金準備率の引き下げに加え、マクロ政策でカウンターシクリカル(景気変動抑制的、景気減速局面では規制緩和など支援策を講じるという意味)に対応する意向を表明。さらに一段の減税策、手数料の引き下げにも言及したものです。
足元、中国12月製造業PMIが2年半ぶりに50の節目を割り込んだように同国の景気減速が鮮明となり、中国担当エコノミストは2019年の成長率につき6.1%と、2018年の政府試算である6.6%からの減速リスクを指摘し始めています。米中貿易戦争の下、IMFも2018年10月公表の世界経済見通しで中国成長率予想を6.2%へ下方修正しました。そのIMFが、中国の景気支援策を受けて1月改訂版で一段の引き下げを決断するのか否か、その評価が待たれますが・・見通し盛り込みに間に合わない可能性も否定できません。
ダウは3日にアップルの業績下方修正や世界景気減速不安などで600ドル安で取引を終えた半面、4日は中国の預金準備率引き下げのほか、中国商務省が米中通商協議を1月7〜8日に北京で開催しゲリッシュUSTR次席代表が出席すると発表したため、上昇余地を残しています。トランプ政権による対中追加関税措置の交渉期限が2月末ですから、急がば回れなど言ってられませんものね。
米中首脳会談を開催したものの、ホワイトハウスはブエノスアイレスG20首脳会議の写真でトランプ大統領と習首席のツーショットを更新せず。
(出所:The White House/Flickr)
その一方で、トランプ大統領が2018年12月31日に”アジア再保証推進法”に署名、台湾を含むアジア各国との安全保障面や経済面での協力強化を盛り込んだ法案が成立しました。同法案に真っ向から対立するかのように習近平首席は2日、台湾政策に関する演説を行い「武力行使を放棄することを承諾しない」立場を明確化したものです。武力ではなく平和的統一を呼びかけた”台湾同胞に告げる書”から40周年記念に合わせて演説した内容は、2018年3月の「中国の国民と国家は、わずかな領土の割譲も許さないという共通の強い信念を共有する(not a single inch of our land will be and can be ceded from China)」などとする演説からはトーンダウンしています。とはいえ、今回も台湾が独立を模索すれば「難局に陥る(dead end)」と警告するのを忘れません。
2019年も米中対立を軸に、急変動が続いてしまうのでしょう。
(カバー写真:bfishadow/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年1月4日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。