このたびの大地震・大津波の被災者の方々に心よりお見舞い申し上げます。
情報アクセシビリティ研究会では、2006年に「みんなの命を救う:災害と情報アクセシビリティ」と題する書籍をNTT出版から刊行した。この本では、災害発生時に、避難や支援の情報や災害の状況を正確に流し、災害の現場で情報の途絶に苦しむ人々を救うための具体的手法と政策を提案した。
先週3月11日に東日本の広い範囲で大地震・大津波が起き、未曾有の被害が発生しつつある。先の書籍は主に防災の観点から記述されたものだが、たった今、利用できるだろう提案も書かれている。そこで、書籍の一部を無償で公開することにした。書籍のPRよりも、微力ながらも社会に役立つことを優先しようと考えたからだ。参考にしていただければ幸いである。
この本に書いたことの一つが「時期によって情報の種類は異なる」である。最初に流れるのは、人命の安否を確認したり、公共施設や社会基盤の損傷程度を確認したりといった「状況確認」の情報である。続いて、流通するのが「避難関連」の情報である。応急対応や災害復旧に協力するボランティアに関連する情報も含まれる。その後、「復旧関連」「復興関連」へと移っていく。
ボランティアは被災地の外から現地に駆けつけてくる。救援物資も同様に被災地の外から届く。被災地の外では、情報通信基盤は正常に機能しているので、救援物資を送りたい、あるいはボランティアに出向きたいと考えている人たちに情報を伝達するのに、インターネットを活用すべきである。テレビで「被災地では満足に夕食も配られていません」と放送したら、握り飯がたくさん届き、食べきれずに処分したという、泣くに泣けない話を聞いたことがある。必要とする救援物資の内容や量、あるいは必要とする地域について詳細な情報が提供されていれば、そんな無駄も防げたに違いない。被災した各県がそれぞれ取り組んでいるようだが、辻元清美災害ボランティア担当首相補佐官には、まっさきにこんな情報提供に取り組んでほしい。
仙台市のサイトは平常時と姿を変えている。関連情報をいち早く掲載しようと努力している職員の努力に頭が下がる。このページ作成自体を、被災地の外で行うという方法も考えられるだろう。仙台市からは、掲載して欲しい情報を、電話、ファックス、メールなど、ありとあらゆる情報通信手段を利用して送り出す。それを遠隔地で受けて、編集し、整理して、サイトに掲載するという方法である。このようにすれば、災害に巻き込まれている外国人への情報提供も進む可能性がある。仙台市のサイトには英語での情報提供もあるが、当局の発表を英訳してPDFにしただけで、必要な情報がどこにあるか、わかりにくいのが現状である。これも被災地の外で助けることができるだろう。
繰り返しになるが、「みんなの命を救う:災害と情報アクセシビリティ」の一部を無償で公開した。参考にしていただければ幸いである。
山田肇 - 東洋大学経済学部