韓国水素エネルギー社会への期待

韓国ソウルに水素エネルギー社会の実情調査を行ってきた。水素社会の入り口に不可欠な水素ステーションは、約40か所。35MP(メガパスカル)ステーションと70MPステーションが併存していて、新規に建設されるものは70MPとなり、35MPのステーションも70PMに置き換えられているという。

一方で、路線バスやタクシーが天然ガス車のためにガスステーションが多数設置されている。水素は、化石燃料としての天然ガスから改質して製造することが出来るため、既存施設を活かして水素ステーションを整備できる環境にある。提供されている水素の値段は1Kg、800円。満タンで5000円程度という。

視察に訪れた「空公園」にある水素ステーションは35PMのエアプロダクツ製のステーションとなっている。1日10台くらいのFCV(燃料電池自動車)が充填しに訪れるという。空公園はソウル市の30年分のゴミを廃棄してつくられた土地の上建設されている公園だ。エリアの中にはゴミ焼却場もあり、正にゴミを中心としたエコシステムがつくられている。空公園は、ゴミが埋め立てられていることもあり、そこからメタンガスが発生していて、そのメタンガスを改質して水素をつくり、ステーションからFCVに提供されているという。日本には、都市ガス、牛の糞尿、下水汚泥、再エネ等から水素をつくるモデルはあるが、ゴミの埋め立て場から生じるメタンガスを使って水素をつくるというモデルは日本には無く大変に興味深い。

一方、FVCは現在約1000台が街中を走っているという。購入時には日本と同様に購入補助金制度があり、国が100万円、自治体(日本で言えば県・政令市)が150万円、計350万円ということです。韓国のFCVは現代自動車が製造する「NEXO」の1種類、NEXOの値段は約700万円なので、半額が補助金ということになる。

日本の補助制度は、国200万円、都道県100万円。市町村で+αがあり、横浜市の場合は50万円がプラスされ、合計350万円となる。購入補助金制度は日韓とも同様の仕組みが存在していることになる。

NEXOの走行距離は満タン(充填時間5分・金額5000円)で609km、トヨタミライより少し短いが、ほぼ同様の燃費効率です。NEXOの年間製造台数は1000台ですが、それは政府の補助金予算で販売台数が決まり、製造台数を決めているということです。政府の補助金予算が増えるなら、それに合わせて製造台数は増やせると言う。

FCVバスも現代自動車が製造しているといいます。平昌オリンピックでFCVバスを走らせ、その車両は、現在ウルサンで2台とプサンで3台、路線バスとして使用されているそうだ。来年にはソウルでもFCバスが走る予定といいます。FCバス使用されている燃料電池は、FCV用の燃料電池とは別に現代自動車が開発したFCバス用の燃料電池が積載されているそうだ

韓国政府も、「水素経済活性化ロードマップ」を策定し、水素エネルギー社会を推進していくことを明確にしている。文在寅大統領も「水素経済はエネルギー源を石炭、石油から水素に変える産業構造の革命的変化だ」と捉えているようだ。

水素エネルギー社会は、日本だけが取り組めば良いというこではなく、世界中が地球環境の為、世界平和の為、国富の再分配の為にも必要な社会像だ。そして、水素設備や水素自体の低価格化の為にはマスで利用されることが必需となる。日韓で水素エネルギー社会確立の為にも、更に協力体制を強化すべきだ。


編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2019年5月24日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。