トランプ夫妻への皇室の対応には改善すべき点も

八幡 和郎

トランプ大統領夫妻の、令和最初の国賓としての訪問は大成功だったが、安倍首相周辺の際だった演出ぶりと、雅子皇后への関心の高さに比べると、新陛下や宮内庁のほうは、なにか問題があったわけでないが、少し影が薄かったように思う。

これは、みんなあまり指摘しないが、今後の課題として重要だと思うから敢えて書く。

宮中での歓迎式典(宮内庁撮影)

まず、プログラムが非常に保守的でこれまでと同じラインで、少し丁寧だけだったように思う。

晩餐会の食事は以下の通りだ。

・清羹 コンソメスープ

・平目牛酪焼 舌平目のムニエル

・牛背肉焙焼 背肉のステーキ

・サラダ

・アイスクリーム(富士山型)

・果物

・ピュリニー・モンラッシェ 2002年

・シャトー・ラフィット・ロートシルト 1996年

・モエ・エ・シャンドン ドン・ペリニヨン 1999年

宮中晩餐会(宮内庁撮影)

なんでも、「米大統領だからといって格別のものを出すことはしません」「誰に対しても平等に、最高のものでもてなす」「小国であろうと、大国であろうと、これは変わらない」のだそうだ。

特別なことは、いつもは羊の蒸し焼きなのが牛肉に変わったことくらいだ。この保守性は、それはそれで面白いが、それなら、そういうことをむしろ強調すればいいのだが、そうでもない。また、何かひとつくらい、特別のサプライズもあって良いように思う。

アメリカ側からのプレゼントは、以下のようなものだ。

トランプ大統領から天皇陛下への贈り物は80年以上前に作られたビオラ。陛下は大学時代にオケでビオラを弾いておられた。皇后陛下への贈り物はハーバード大学の木で作られた万年筆だ。雅子様の留学先である。

いずれも素晴らしいセンスだと思う。

それに対して、両陛下からは、トランプ大統領には「青い陶磁器の鉢」を、メラニア夫人には「金細工の飾り箱」とあるが、産地も作者も名無しの権兵衛。オーソドックスな贈り物だが、なんのサプライズもない。

そして、陛下がトランプ大統領にビオラを贈られたのを見た雅子様は「今夜、宮中晩餐会で演奏されたら?」と仰ったのだが、それは実現しなかった。これは、演奏しないなら、最初から期待を持たすことはしないほうがいいし、こういうやりとりがあったら「今夜は準備ができなかったが、こんど目にかかるときには」とかフォローした方がいいだろう。

また、パレスホテルから皇居へ向かう車列を映すのは絵になったが、それだけにとどまったようだ。もちろん、お二人で歓待されレベルの高い会話があったのだろうが、それが両国民に伝わらないと意味が無いとは言わないが、効果半減だ。

両夫妻では、メラニア夫人と雅子皇后がおおいに目立った。メラニア夫人のあのハイヒールの高さは元モデルでなかったひっくり返りそうだ。スラブ系の女性はピンヒールが好きで、それが履けなくなったら現役引退に等しいとかいうくらいだから、スロベニア出身のメラニアさんもそういうことか。

米国大使館ツイッターより:編集部

雅子皇后服装も非常に見事。かなり高価そうでヨーロッパ的気品の感じられる服装で、メラニア夫人に見劣りがしない工夫がよくされていた(秋篠宮皇嗣妃殿下の服装がひどく見劣りしてお気の毒という鋭い女性ウォッチャーの指摘あり)。

それに比べると、陛下の服装はあまりにもオーソドックスかも。とくに大柄なトランプ相手だとなおさらだ。なにも和装にする必要は無いが、少し日本的な要素もネクタイとか装飾品などで工夫できないものか。

結果、雅子皇后の服装ばかりが目立ったという印象もないわけでない。日本人の場合、しばしば、女性の方が目立つ傾向があるのだが、やはりバランスへの配慮も必要だ。今後、両陛下の海外訪問の機会も出てくるだろうから少し工夫した方が良い。

両陛下が英語がお上手で通訳なしで大統領夫妻と話されたとかいって、褒めそやすメディアもあるが、これは贔屓の引き倒しに近いかと思う。英国に留学されていた陛下と、外交官の娘で自身も外交官なのだからあたり前のことだ。

誉めるなら、こういうやりとりで、こんな気が利いたことをいわれたとかいうことでなくてはなるまい。また、皇后陛下については、万全の状態で広汎な公務ができない状態が続いているのだから、得意分野だけうまくやれたからといって、絶賛するのもいかがなものか。

「まだ、回復へ道半ばだが、まずは、得意分野の外交で期待通りのお振る舞いであったのは喜ばしい。徐々に無理をなさらずに、一歩一歩、範囲を拡げていかれたらよいと思う」ということであるべきだと思う。

以前にも書いたが、さんざんおだてて後で逆さ落としというのが、自称リベラルマスコミ(偽リベラル)のいつもの手口だ。彼らにとって皇室は、皇室は利用できるときは利用する存在にすぎないのだからご用心だ。