トランプ大統領も構造改革が大好きな方だと思います。当然ながら日米安保も不公平と再びかみついてきました。別に今に始まったわけではなく、大統領就任時から考えていたリストの一つであろうと思います。その意味がどこにあるか、どういう戦略にでるか、それを改めて考える時期に来たのかもしれません。
二国間関係は永遠ではなく、結果として有期的関係になることはあります。世界を見れば情勢に合わせて微妙なかじ取りをとる国は案外多いものです。中国とロシアの関係一つとっても戦後、近づいたり離れたりしてきています。その背景は二国関係がパリティかどうか、時の政権の見方次第で不平等感が見えてきたりするのでしょう。
ただ、二国関係を目先の損得勘定で判断するのも危険であり、冷静さを保つことは重要であります。
さて、今回のトランプ氏の日米安保に関する言及ですが、私にはジャブのように感じます。中国との一件が収まれば次は朝鮮半島と日米安保が一体で検討されるかもしれません。トランプ大統領は朝鮮半島問題についての真意が何なのか、どうしたいのか、これが見えにくいのですが、トランプ氏には韓国に対して辟易感があるようにみえます。これが単に文大統領との個人的関係なのか、朝鮮半島政策そのものなのか、判断に苦しみますが、基本的には東アジア政策にアメリカが今後どこまで関与するか、というところなのでしょう。
仮にそうである場合、アメリカは朝鮮半島での直接的関与は状況次第で撤退もあり得ると思います。状況次第というのは北朝鮮の体制変化が起きて韓国駐留米軍の正当性が見直せる事態になった場合です。朝鮮戦争を通じてもともとが赤化拡大阻止という名目でしたが、今日、赤化が膨張するという趣旨はピンときません。
では、朝鮮半島からの撤退があった場合、日本はどうなるのでしょうか?私見としては中国が新たなる冷戦相手となる可能性はあり、太平洋の防衛ラインを維持することは重要で日本との安保を「もうやめた」ということはまず考えられないとみています。
とすれば冒頭のトランプ発言は日本に対して「もっと金を出せよ」というせびりか、「貿易交渉が待っているぜ」の脅しか、「安倍首相も憲法改正したいんだろう」という暗黙の援護射撃のどれかではないかとみています。
では憲法改正の援護射撃だった場合、いくらアメリカが応援したとしても本当に安倍首相に実現できるでしょうか?少なくとも現時点で見れば困難だと思います。あまりにも世論がそこに向いていません。世界で様々な不和が起きる中、日本だけが奇妙な静けさの中にあり、危機感がまったく高揚していないのであります。
ある役人と話をした時、「日本の外交は全方向外交で実にうまくやっている」と自画自賛していましたが、外務省は基本的に弱腰仲良し外交路線を長く続けており、敵を作らないやり方にたけています。これが結果として9条改正機運に結び付かない間接的な影響とみています。
また、仮に憲法改正で9条が見直されたとしても日本が独立独歩になるのは1000%無理であります。現代の戦争とは実際のドンパチというより、カードゲームのように潜在兵力や能力で「俺はこんなもの、持っているぜ」「俺だってこれがあるぜ」というバーチャル上のバトル合戦です。それには日本はあまりにも年老いているし、潜在兵士としての人口も足りないし、防衛予算の膨張は国民が許さないでしょう。
トランプ大統領の言う「いざという時、アメリカは日本を守るが、日本はアメリカを守らない。これは不公平だ」という点もトランプ大統領のトランプゲームの手の内の一つというのが本音ではないでしょうか?日米安保破棄は全くもって現実的ではなく、言葉をそのまま受け止める話でもないと考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年6月28日の記事より転載させていただきました。