前回、僕はここで、「年金2000万円不足」問題について、安倍晋三政権と自民党への危惧を述べた。現役閣僚である麻生太郎さんが、不都合な真実から目を背け、「そんな報告書は受け取らない」などと言う。それを誰も批判しない。ほんとうに僕は、安倍政権に失望しているのだ。
だがしかし、「目を背けない」政治家たちがいた。それも、自民党の若手議員だ、という事実が、僕に希望を与えてくれた。
2016年に発表された、「人生100年時代の社会保障へ」という提言がある。作成したのは、「2020年以降の経済財政構想小委員会」だ。自民党の小泉進次郎さんが委員長代行を務めている。ちょっと長いが、要点を紹介しておこう。
日本の社会保障が形成されたのは戦後、高度成長期だった。「『20年学び、40年働き、20年老後を過ごす』」という人生が「典型的」とされた時代だ。「年金や医療介護は、こうした単一のレールを想定して整備された」。
しかし、この「単一のレール」想定では、対応できない時代になろうとしている。「今の年金制度には大きな課題がある」「2020年以降、健康寿命がさらに延びていく」「年金制度は、『長く働くほど得をする仕組み』へと改革すべきだ」。
「例えば、 年金受給開始年齢はより柔軟に選択できるようにする。年金保険料はいつまでも納付できるようにする。働くと年金が減額される仕組みは廃止する」などと提言しているのだ。
人口減少、高齢化を前提としたうえで、彼らは、社会保障全体を見直そうと、抜本的な改革を提言している。 もちろん、提言の内容は完璧ではなく、課題もあるだろう。しかし、若手議員たちが、議論のたたき台となる、こうした提言をしたということに、僕は大きな希望を見るのだ。
この提言は、もっと大きく取り上げられ、おおいに議論されるべきだと思う。だが、ほとんどのマスコミは、政治家のスキャンダルしか報じようとしない。
そこで僕は、小泉進次郎さん、その同志である、福田達夫さん、小林史明さん、村井英樹さん、この4人ととことん話した。そして、この議論を『令和の日本革命』という本にして世に出した。
ほとんどの国民は、これまでの社会保障では、財政的に持続できないだろう、ということはわかっている。しかし、それを政治家たちが、ごまかそう、隠そうとするから、政治に対して不信感を持つようになるのだ。「不都合な真実」もきちんと発表し、ではどうしていくか、と国民に問う。真に必 要なのは、このような姿勢ではないか。
提言の最後は、次のような言葉で締めくくられている。「今こそ『人口減少でもやっていける』という楽観と自信をもつことにつながる社会保障改革が必要だ。一時的に痛みが伴う改革から逃げてはならない。国民の理解を得て、必要な改革を断行すべきだ」
政治家の本分とは何か。政権や閣僚たちが現実から目を背け、何もしようとしないのは、「自分の代は逃げられる」と思っているからではないのか。もしそうなら、政治の舞台から、即刻退場すべきだと、僕は思う。
編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2019年6月29日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。