がん撲滅サミット+定価より高い中古本

第5回がん撲滅サミットが11月17日の午後1時から開催される。この開催に向けて奔走されているのが中見利男さんという作家である。

北島政樹さん(国際医療福祉大学サイトより:編集部)

今年は慶応大学の外科教授であった北島政樹先生を大会長として開催される予定であったが、北島先生の突然の逝去によって、北島先生は永世大会長として、空から見守っていただく形になった。

個人的に非常によくしていただいたし、内閣府AIホスピタルプロジェクトで医療用語辞書を作る委員会の委員長をお願いしたばかりだったので、私にとってもショックな出来事であった。

北島先生が大会長をされた第100回の日本外科学会でも特別講演に呼んでいただいたし、国際学会・国内学会でも何回かお会いして、食事を同席させていただいたことが少なくなかった。4月にお会いした時には、「中村君を慶応大学に招聘しようとしたときに、スペースが足らないと言って断ったのを覚えているかい。慶応で一番融通が利かないのがスペースなのに難題を押しつけて!」とニコニコと微笑みながら、チクチクと皮肉を言われた姿がなつかしい。

北島先生は、新しい技術に対する先見性に富んだ方であり、かつ、患者さん想いの偉大なる外科医であった。がん医療を漢方医薬も含めて統合的に進める観点を持たれていた。がん撲滅サミットの目指すところは統合医療でがん死を亡くすことであるが、それにも非常にサポーティブなお考えだった。この統合医療といういろいろな観点で組織されているがゆえに、誤解を受け、一部の方からは非難を受けている。

しかし、日本では、「実態を知らないが、偉い人が言っているから駄目だろう」的な批判(といえば聞こえがいいが、悪口)が多い。文句があるなら、会場で堂々と議論すればいいのだが、登壇する事さえ認めない人が多いのが実情だ。

先見性のない偉い人たちの、背後からの悪口コメントで、日本の医療・医学は欧米に大きく後れを取った。駄目なものを駄目と考える科学的な根拠を、正々堂々と会場で議論しようではないか?医師も、研究者も、患者さんも、患者さんに生きていて欲しいと願う家族も、皆が集まって、何が正しいのか、誰が正しいのか、自分の目で見て、耳で聞いて、判断して欲しい。中見さんも私もそのような議論の場を提供することを願っている。

統合医療の場には、確かに眉を顰めるような医師はいる。でも、玉石を見極め、石の医師を駆逐するためは、表での議論をして決するべきではないのか。ぜひ、色々な立場の方に集まっていただき、科学的な議論が展開され、日本のがん医療の夜明けが来ることを願っている。

そして、余談だが、がん撲滅サミット時に、2013年の拙著「これでいいのか、日本のがん医療」と近著「がん消滅」を何らかの形で20冊ずつ配布しようと思って、2013年の本をAmazonで購入することを考えた。

調べてみると14冊が売り出されていたが、見てびっくりの価格だ。定価1400円より高いのだ。高い方から並べると、25490円、8944円、7609円、6767円、6511円、1870円、1800円と半分が定価超えで、最高は定価の20倍弱だ。

新潮社に増刷をお願いすべきだったと後悔した。いまからでも増刷してくれないかな???


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2019年9月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。