昨日、またしても巨額横領事件のニュースが飛び込んで参りましたが、マクドナルドの社員が、FXにはまりなんと7億円も横領していたらしいとのことです。
マック社員、7億円着服か…小切手を換金「FX投資に」
詳細は分かりませんが、この横領事件を起こした人は38歳とのことですから、奥様や小さいお子さんがいらっしゃる可能性、そしてもちろんご両親もご存命と思われ、本人はむしろ捕まってホッとしているかもしれませんが、ご家族の心労はいかばかりかと案じております。
当会にもFXの相談はここ数年増加傾向にあります。
もちろんFXはギャンブルではありませんが、安易に「お金を増やそう」と始め泥沼に陥り、ギャンブル依存と同じような状況になってしまう人が一定数います。
現状では「FXのギャンブル性」や、「FXでも依存症になる」といった啓発が殆どなされていないので、相談にも繋がれていない人が多いのでは?と推測されます。
ちなみにうちの夫も最後にハマったのがこのFXで、今から11年ほど前になりますが、自助グループには通っていたのですが、
「FXはギャンブルではない、正当な経済行為」と自分を誤魔化し始めてしまったそうです。
そしてわずか2カ月で800万円もの借金を作ってしまい、私にバレ、自助グループでプログラムをやり直し、そこから任意整理をして5年かけて完済しました。
もうこの時は本当にお金が回らず大変でしたね。まさに地獄を見ました。
あの時、夫は自宅を不動産担保に入れ3000万円を借りようとしていて、その書類が送られてきたことから私が気付いたのですが、本当に危ない所でしたね。
今頃、家族5人住む所も失っていたかもしれません。
実は、FXに限らず、先物取引や株の信用買いなどなんでもそうですがこういった投機というのは、いわゆるパチンコだとか公営競技だとかのギャンブルよりも、とんでもなくリスクが高く、ギャンブラー心理から言うとめちゃくちゃハマりやすいものなんですよね。
まず、FXなどの投機類はギャンブルの様なイメージの悪さがありません。
むしろ「エリートサラリーマン」「お金持ち」のような感じすらします。
そして「手軽に始められる」というCMが横行しています。
ところがこれら投機類というのは、普通のギャンブルと違い「負けたらゼロで終わり」ではなく、1日でマイナスに落ち込み、不足分を入金しないと続けることも清算することもできない・・・
という地獄の様な状況に陥るんですね。これマジで恐いですから。全然手軽じゃないです。
リーマンショックなんかあったらひとたまりもないですけど、そこまで行かなくても政治的な動きがあったりして、自分の想いとは反目に相場が動いたとする。
そうするとですよ、例えばたった1日で「お客さんすぐにお金を追加で入れてくれないと、取引できませんゼ」ってなっちゃって、慌てて「清算してください」って言ったって、その追加金入れなきゃ清算すらできない借金として残るんですからね。
その追加金が自分が買っている金額と相場によっては、100万になるのか?1億になるのか?全く分からない訳です。
私も一度、先物取引のとうもろこしであっという間に、200万円の損失を出したことがあります。
だから、投機で借金までしてしまうと、どうしても「なんとか取り戻そう」というギャンブラー心理に陥ります。
しかもですね、私の経験からすると人は単純な博打ほど「勝てそうな気がして」ハマると思うんですね。
投機というのは要は「上がるか?」「下がるか?」の2つに1つであって、まさに「丁半バクチ」「バカラ賭博」みたいなものな訳ですよ。
単純ゆえに、取り戻せそうな気がする・・・これがまさにギャンブラーがズブズブに落ち込む罠なんですよね。
「バカラ」がカジノの王様たるゆえんですね。
FXは「お手軽に始められま~す!」なんてCMを打ちすぎだと思いますね。
もっとリスクについて啓発すべきだと思いますが、業者から見たらもちろん「ギャンブルじゃない!」
という言い分があると思うので、私はあえて「FX依存」とか「投機依存症」とかって言葉も作ってはどうかな?と思います。
そうして言葉が広まって、社会問題として理解されたら、安易な煽り広告はやめよう!と、そんな段階を踏んである程度広告規制などの動きにいけるのでは?と思います。
ちなみに今回の事件以外にも、マスコミを騒がせたFXの損失補てんのための巨額横領事件には、以下の様なものがありました。
・2014/5/1 りそな銀行 私的資金集め1.5憶
りそな行員、私的に1.5億円集め大半消失 発覚後自殺(日本経済新聞)
・2014/7/6 伊藤忠元社員7億円横領事件
伊藤忠元社員を逮捕 FX取引に数億円流用の疑い(日本経済新聞)
・2017/4/10 元郵便局員8000万円横領
元郵便局員、1300万円横領 容疑で渉外担当逮捕 同様被害、総額8000万円超か 千葉県警 茂原・本納(千葉日報)
・2018/3/16 元都民銀行行員1800万円着服
元行員、顧客から1800万円着服 FXでの損失穴埋め(朝日新聞デジタル)
このように、FXの損失は巨額横領などの事件、果ては自殺・・・といった大きな社会問題に繋がりやすいですね。
パチンコや競馬などが若い学生などがハマるのに対して、FXは有職者それも大企業や公務員などそもそもお金に余剰がある人がハマるので、
信用がある分被害額が大きくなり、巻き込まれる人も増えます。
また、為替や市場は日本が閉じるとNYが開くので、それこそエンドレスになります。
ですから、パチンコや公営競技のように曲がりなりにも1日のうちに終わりの時間がある・・・
というものよりも依存しやすいです。
FXは、本当にもう少し啓発や規制を入れないと、マズイと思っています。
さて、ここまで書いてきてFX依存って何かに似ていると思いませんか?
そう!カジノです。
私が思うにこの投機にハマる客層と、カジノにハマる客層は似ていると思いますね。
だから金持ちはハマらないなんて論理はバカバカしいし、入口対策だけではどうにもならないですよ。
だって、銀行なんかみんな厳しい監査や、そもそもFX取引を禁じていたりと、入口対策はこれ以上ないってくらい厳重にやってますからね。
あとは入場制限や入場料?マイナンバーで、顔認証でチェック?バカバカしい・・・
ハマったらMAXの10日国内、金曜夜~月曜朝まで月8日、シンガポールか韓国のカジノに行くようになりますよね。
なんでもやるのがギャンブラー。
1億横領して、必死に取り戻そうとしている人間が、6000円の入場料のことなんか考えるわけないですしね。
やはり重要なのは、依存症になった人をいかに早期発見し、いかに治療に繋ぐかってことで、その対策が日本には全然ないし、理解できる人がいないんですよね。
ホントろくな対策出てこないですけど、大丈夫ですかね?
それから各企業も、自分たちの会社と社員を守りたいなら、FX及び投機依存症対策を取り入れるべきだと思います。
これだけ事件が起きているんですから、企業もいい加減学びましょう!
田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト