発送電の分離についての議論が盛り上がっていますが、業界の中の人は意外に醒めています。「NTTの中途半端な分割にも15年かかった。当時の自民党よりはるかに政権基盤の弱い民主党政権でできるはずがない」という声が多いようです。これは官民の力関係もさることながら、そのメリットが見えないことも原因です。
今は世の中が「東電憎し」で盛り上がっているので、送電網を分離するというと拍手を浴びるかもしれないが、分離したら本当に競争が起こるでしょうか? 海部美知さんも指摘するように、規制強化だけやっても、ガチンコで闘うライバルが出てこないと競争は生まれない。東電をスケープゴートにして「公正競争」の建て前を振りかざしても、ビジネスは変わらないのです。
かつて電電民営化のとき、中曽根内閣は土光敏夫氏を第二臨調の会長にし、オール財界のバックアップで電電公社と全電通を追い込みました。電電を民営化するだけでなく、第二電電(現在のKDDI)というライバルをつくり、社長には真藤恒氏を送り込みました。今でいえば、東電を解体して「第二東電」をつくり、東電の社長に柳井正氏を送り込むようなものでしょう。それぐらい周到な仕掛けがあって初めて電電公社の独占は崩せたのです。
それに対して、民主党政権は東電の破綻処理もできないで「債権放棄」を要請するなど、迷走しています。発送電を分離しても、日本のPPSは東京ガスや新日鉄などの重厚長大企業ばかりで、東ガスの最大の顧客は東電だから、八百長にしかならない。一部で期待されていたソフトバンクの電力事業参入も、「メガソーラー」では話にならない。太陽光発電というのは補助金がないと成り立たない農業みたいなもので、東電のライバルにはなりません。
期待は外資系ファンドぐらいですが、J-POWERのとき外資を排除した経産省が許さないでしょう。外資も成熟した日本より中国に関心をもっています。この状況では、法律だけ変えても競争は起こらないし、そもそも民主党政権には法律を変える力もないでしょう。古賀茂明氏も指摘するように、現在の政権は財務省の子会社みたいなものですが、その財務省が東電を破綻処理すると公的資金が必要になるのをいやがっているので、本質的な変化は期待できない。
かつての電電改革が民営化なしでできなかったように、東電を解体しないかぎり発送電の分離はできません。その支配力は圧倒的で、いうことをきかない業者は業界から排除されます。東電救済への批判をかわすリップサービスに発送電分離を口にするような政権では、どっちもできないで終わるでしょう。
コメント
真藤恒さんとは懐かしいですが、結局は逮捕されちゃいましたよね。
公務員の利権を損ねるような人は、結局タイホされちゃうんじゃないでしょうか。
そういえば、東電に天下った、前だった元だったかしらんけど、資源エネルギー庁長官だった方がコソーリ4月に辞めてしまった模様ですね。
まぁ、役員が無報酬なら顧問も無報酬と考えられるわけで、とっとと逃げ出したというのが本音か。
新しい棲家を追跡する必要は有りそうな気がします。
問題はさほど複雑でも困難でもありません。
先ず、電力会社の乱立という構想を整理することです。
巷間多く語られる、発送電の分離でいきましょう。
それには、送配電を国有化することです。
送配電路を道路と見立てましょう。配電には、供給義務が課されています。つまり、道路と同じです。居住者が生活する道路は、国、並びに地方が責任を持って整備し維持します。
送配電路もこれと同じ事です。
その上で、発電して、送配電線路に接続することを、自由化します。
実はここでも、現行体系では様々な障壁があって、接続を困難にしています。
例えば、此の国には、数十万台の発電機が眠っています。消防法や、建築基準法出言うところの非常用発電機です。
これを、系統に自由に接続できる環境を整備して、例えば、ピークカットに活用すれば、原発分などたちどころに解消されます。つまり、だから、電力と経産が結託してややこしい制限を付けてきたのです。障壁です。
東電分解して、送配電を分離して国有化することで、発電の参入を自由化すれば、計り知れない利益が生まれます。
眠らせておくには余りに勿体ない資産が、此の国には、今現にあります。活用しましょう。
発送電分離という議論が出てきましたが、よくメリットがわかりません。発電と送電が一緒で規模が大きすぎるから参入障壁が高いという理屈なのでしょうか?
それで発電だけ分離して競争環境に置くってこと?
だったら新規参入の発電方法は原子力を目指すでしょ。それ以外、殆ど発電しても儲からないんだから。
中部電力が浜岡原発止めたら赤字なんだよ。つまりは原発以外の発電方法はもうからないってことでしょ。そして原発以外の利幅の薄いビジネスに、大きな投資して参入する業者いないでしょ。補助金がわんさか出る場合だけだね。孫さんはそこを目指しているのかな。
この議論は唐突感あるんだよなぁ。ま、現政権はいつも唐突だけど…
もう少しこの議論が目指すところを解説してくれると助かるのですが・・・
ganz007jp さん、恐らく発送電分離の意義を御存じでいながら、敢えてメリットが不明というご意見をご提示かと思いますが、発送電分離のメリットは、仰る通り発電だけ分離して競争環境に置くことです。
送電は自由競争にしても参入する業者はなく、自由化する意味がない。一方で、発電は自由競争にする必要に迫られています。少なくとも関東では。
発電を自由競争にしたら、最も効率がよいと(仰る)原子力を目指すか。そうは思いません。小規模でも近隣に送電するだけなら、発電は「手軽な」ビジネスになりました。その参入障壁をなくすのが、発送電分離の目的です。
おそらく、関東地方(東京電力域内)以外では、発送電分離を”強制”しても、メリットは少ないと思われます。電力需要があまり伸びていないからです。
関東は電力需要が伸びているのに、東京電力が”実質”独占し、全国の1/3もの電力を販売しています。この巨大企業は、経済全体からしたら害悪です。分割は必須です。
首都圏だけでも発送電分離をすれば、経済の起爆剤になることは間違いなしです。
税金を1円でも投入するのであれば、東電の資産である送電線と、原発以外の発電所は一時国有化し、民間に売却するべきでしょうね。
地域独占企業は、官僚と同じく、黙ってても、努力しなくてもお金が入っている組織となってしまうため、腐って行くのは当然です。
今こそ、民間扱いして上げる事が大事でしょう。
但し、経産省を始めとする霞ヶ関の官公庁は間違い無く天下り先機関を死守しようとするでしょう。
■天下りと関連予算のまとめ
http://blog.livedoor.jp/hardthink/archives/51827460.html
■薬害エイズ問題でも責任を問われずに天下りを続ける官僚
http://blog.livedoor.jp/hardthink/archives/51827536.html
■天下り天国度と幸せ度のまとめ
http://blog.livedoor.jp/hardthink/archives/51833901.html
■今、日本国民が出来る事
http://blog.livedoor.jp/hardthink/archives/51829747.html
■浜岡停止だけではな駄目な理由
http://p.tl/h4hF
ryoito88さん
丁寧な解説ありがとうございました。私見ではありますが、発電そのものはすごいノウハウがあるものではないと思っています。
原子力以外でエネルギーを使いながら電気をおこすってビジネスは規模の経済性がもろに出てしまうと思うのです。発電機が大きければ大きいほど有利ってことになる。(つまりは大資本が圧倒的に安価な電気を供給できる。)
そう考えると新規参入業者が勝てる市場なのか?ってことに疑問があるんですよね。
もちろん独占だから東電が余計な経費使って、割高な電気代になっているということはあるかもしれませんが…
ganz007jp さん、
確かに、大規模発電機の方が電力量当りの発電費が安い可能性が高く、新規参入の発電会社が常に勝てる、という市場にはならないかもしれませんね。
むしろ新規参入が、某六本木のビルのように小規模にあちこちで展開され、発電を本業としない発電者が多く現れて、地区毎に互いに電力を融通しあう、そんな市場ができるのが首都圏では理想なのかもしれません。