今月22日に首相の施政方針演説や各党の代表質問が行われた中で、安倍首相がIRについて「IR推進には国民的理解が重要で、丁寧に進めていきたい」と発言されましたが、これまで首相ら官邸はカジノについて一度だって丁寧に進めたことがなく、今度もまた口約束だけではないのか?と懸念を抱いています。
この件について本日25日の東京新聞さん朝刊で私の意見が特集されましたので、是非、こちらもご一読ください。
そもそも日本にカジノを作るときにも、強行採決に至ったわけですが、その時も「しっかりやる!」という、気合い発言だけで実際には全然しっかりやられていません。
東京新聞にも書きましたが、ギャンブル等依存症対策基本法は結局ギャンブル産業におもねったものとなりました。
例えばですよ、競馬を例に挙げますと、私たちが採算声を上げてきたものには、
①広告の抑制
②未成年者の購入に対する厳格な防止策
③厚労省主導の青少年に対する予防教育への協力
などがあったのですが、結局関係者会議で決まったことは、
①について
主要レースにおける広告費の抑制等について盛り込むことを検討する
という文言にとどまったんですね。
こういう書き方、ものすごく巧妙な官僚の作文であり、ギャンブル産業側のみの意見を聞いたものですよね。
だって、「検討する=何もしない」というのは日本の政治の常じゃないですか。
そして実際、本当に何も変わっていません。
今年の有馬記念の広告もやりたい放題。
アルコールでは禁止されている、駅全体をジャックするような強制視認広告が主要大都市で堂々と行われました。
JRAの収支を見ると、広報費には年間150億円も使われているのです。
②について
依存症はなんでもそうですが、手を出した年齢が低ければそれだけリスクが高まるというのは、様々な研究データからも明らかにされています。
だからアルコールもギャンブルも年齢制限が法律で定められており、厳格に守らせなくてはならないのです。
ところが日本はアルコール、ギャンブルという巨大産業に関しては甘々も大甘で、その対策すらろくすぽやらなくても許されてきているんですね。
海外では映画などを見ればお分かりの通り、若い子がアルコールを買うのはIDが必須じゃないですか。
この法令順守のための対策すらいまだ実現していないので、我々はたばこでいうタスポのようなもので、きっちりと購入時にチェックすべきだと申し上げていますが、それすら基本計画では、相変わらず若い子を目視でチェックする警備員を増やすとか、挙句の果てはですよ、若い子を顔認証でチェックできるかシステムの研究を開始し、3年かけて導入の可能性を検討する、となったんです。
いや、だからタスポのようなものできっちりやればいいじゃないですか。
もう完全に逃げですね。こうなると若い子をはめて依存症者を作りたがっているとしか思えません。
③について
公営競技全体で作られた昨年度の「ギャンブル等依存症対策啓発週間」のポスターは、全く啓発などになっておらず、むしろギャンブル依存症の再発推進ポスターとなっていました。
依存症者は二度とその依存物質、依存行為に手を出してはいけません。
それは「再発」であり、死に近づきます。
これを見る限り公営競技は、依存症の防止など本気で考えているとは思えません。
むしろ依存症者による売り上げUPしか考えていないように見えます。
そもそも推進する側が、防止策を考えるのは無理があるのです。
だからアルコールでは産業側が予防教育をやるのではなく、厚労省主導で作られたポスターなどの掲示協力をするなどの体制がとられています。
このようにギャンブルの依存症基本計画はまさにアリバイつくりに「やっただけ」の状態です。
しかも今はどんどん過度な医療化がすすめられ、ギャンブル産業は大もうけをさせたまま、社会保障費のツケは国民に回すという信じられない方法がどんどん推進されています。
まずは、ギャンブル産業側が依存症予防に真摯に対応すべきであり、そのためには、IRを推進する部署が同時にギャンブル依存症対策を推進するという矛盾をやめ、ギャンブル等依存症対策の中心を厚労省に移管すべきです。
安倍首相、丁寧に推進するなんて言ってますが、これまで丁寧に意見を聞いたのは、ギャンブル産業側の話だけですよね?
今度こそ、本当に依存症対策に精通した人間の話を聞く気があるのでしょうか?
どっちの話を丁寧に聞くのか?まずそこをはっきりさせていただけますでしょうか?