新型コロナ。飛び火する買い溜め問題

松田 公太

新型コロナに関する政策的・医療的な情報がSNS上に溢れています。私の見解もTwitter等で発信しておりますが、久々のブログでは違う側面からひとつ提案させて頂きたいと思います。

それは、『今こそ日本人の良さを取り戻し、世界に発信しよう!』という事です。

日本のインバウンド増加には二つの大きな要因があります。

一つは文化、特に「食」の素晴らしさ。皆さんもそうだと思いますが、老若男女問わず、海外に行く際の楽しみはグルメです。今となっては、世界で最も安い価格帯で極上の食を楽しめる日本は旅行者にとって最高のデスティネーションです。

もう一つは日本人の国民性。
日本人のイメージを海外で調査すると決まって「礼儀正しさ」「信頼感」「冷静さ」「やさしさ」が上位に入ります。

今回、ポイントとなるのがこの部分です。

それは東日本大震災の時に水や食料の配給を静かに忍耐強く待ち、ご老人や体の不自由な方を優先的に助ける姿や、サッカーW杯で日本チームが敗戦した後にゴミ拾いをするサポーターの姿などを見て、徐々に積み上げられたイメージ。来日する方々は「日本人は礼儀正しく優しいので、訪問するのが安心」と感じているようです。

ところが、直近の状況はどうでしょうか。

マスクや消毒用ジェルならまだしも、紙の生産が遅れているというネット上のデマやマスコミに踊らされて、我先にと慌ててトイレットペーパーやティッシュを買い占める姿。まるで70年代のオイルショック時と変わりません。そして食料品を備蓄しようと焦って買い溜めた結果、空になってしまった米やカップ麺の棚。

都内薬局でマスクを買うために並ぶ人々 2月28日

 

某コンビニのトイレットペーパーとティッシュの棚 2月28日

このようなシーンが世界で発信され始め、残念ながら「礼儀正しさ」「信頼感」「冷静さ」「やさしさ」と真逆の日本人の姿が写し出されているのです。

そして、それに似たような動きが他の先進国でも出始めています。

例えば米国では、感染者数がほとんど発表されていなかった10日以上前からマスクと消毒液が薬局から消え始めました。その状況が顕著だったのがカリフォルニア、シアトル、ニューヨークなど。中国人が多く住む地域だったので、中国人がそれを購入して自国に送ったり、転売をしているという見方が広まりました。地元民は比較的冷静に捉えていたようです。

ところが、ここ数日に起こった現象として、日系人向けのスーパーから米、カップ麺、冷凍食品が無くなり、それにつられるように一般のスーパーでも米、カップ麺、水、そしてとうとう紙製品までもが消え始めたのです。

加州日系スーパーの米コーナー 3月1日

日系スーパーの冷凍食品コーナー 3月1日

地元小売店(ターゲット)の紙製品コーナー 3月2日

新型コロナによる物資の買い溜め騒動は日本から始まったものではありません。元々は中国や香港で始まったことが日本に飛び火したと言われています。しかし、中国は一部、街が封鎖された中で起こった現象です。紙製品を始め、生活必需品の殆どの生産ラインが安定している日本では全く買い溜めの必要がありませんでした。

それなのに国をまたいで、連鎖的な集団心理のパニックが起きてしまう。そして今はそれが欧米諸国へも伝染し始めている。

その火をつけるのが、ネット民や、ごく少数の「初期買い溜め群」。ITが世界を結び、情報量が圧倒的に増えた今の世の中の方が、国際的な買い溜め問題が発生しやすくなっているのです。
もし万が一でも同胞の他国での行動がそれを助長させているとしたら残念なことで、益々、低劣な差別やヘイトにも繋がりかねません。

加州コストコ 3月2日

一方で逆の見方をすると、WHOから「最も懸念する4ヶ国」の一つとして名指しにされた日本において、日本人が冷静に、今まで通りに思いやりを持って生活を営んでいる姿を見せることができれば、世界に見本を示す事ができます。そのような情報もネットがあるからこそ早く広く伝わります。

それには一人ひとりの意識を変えるところから始めなくてはいけません。
買い溜めは論外です。手もとに既に余剰なストックがあるとしたら、まわりで困っている方々に譲ってみては如何でしょうか。

また、日々の生活で必要な防御策は取りながら、いつもより睡眠や栄養をしっかりとり、過剰に怖がらず、なるべく今まで通り平穏に過ごす。

そうやって我々が生活することが、これから感染が広がるかもしれない他国での安心感にもつながり「日本人のように冷静に過ごそう」と国際的なパニックを抑制する効果が生まれるかもしれません。

日本国内のこれ以上の経済的なダメージを食い止めることにもなります。このままいくと、新型コロナによる死者数よりも経済的低迷による自殺者数のほうが圧倒的に多くなってしまうかもしれないのです。

明けない夜はありません。
コロナ騒動が終わり、世界が落ち着きを取り戻す中で 「アウトブレイクの時でもやはり日本人は冷静に、他人を思いやる姿勢を失わなかった」 という印象がより強くなっていれば、 コロナ前よりも多くの人々が訪れたいと思う国に成長していることでしょう。

(the most remarkable thing is that everything was done in an orderly manner, everyone kept their composure, and there were almost no scenes of confusion or trouble. -Bloomberg)

もっとも素晴らしいことは、被災者がみな落ち着きを保ちながら規則正しく物事を進め、ほとんど混乱やトラブルが起きなかったことだ。 ーブルームバーグ


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、元参議院議員の松田公太氏のオフィシャルブログ 2020年3月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。