専門家会議の「若者が感染を広める」という見解には根拠がない

池田 信夫

フジテレビより

きのう新型コロナウイルスの専門家会議が「若者など軽症の人が気づかないうちに高齢者など重症化するリスクの高い人に感染を広める可能性がある」という見解を発表したが、これには専門家からも疑問が寄せられている。

ここに引用されている中国の論文では、中国で発生した患者の年齢分布は次のようになっている。(N=44,672)

・80歳以上: 3%
・30~79歳: 87%
・20~29歳: 8%
・10~19歳: 1%
・10歳以下: 1%

患者の90%は30歳以上の大人であり、19歳以下は2%にすぎない。WHOも「子供から大人に感染したエピソードを思い出せなかった」と書いている。日本でも、厚労省の調査(N=200)では年齢分布は次のようになっている。

・80歳以上: 16人
・70~79歳: 34人
・60~69歳: 51人
・50~59歳: 44人
・40~49歳: 30人
・30~39歳: 16人
・20~29歳: 19人
・10~19歳: 2人
・10歳以下: 4人

19歳以下は、わずか3%である。感染の拡大を防ぐために一斉休校するのは、優先順位が違う――私がきのうツイッターでそう批判したら、山のように「感染して発症しない子供が(感染を拡大する)スプレッダーになる」という反論が来たが、この年齢分布を見てもわかるように、スプレッダーになるリスクは大人のほうが圧倒的に大きいのだ。一斉休校には、感染の拡大を止める効果はほとんどない。

安倍首相が決定したとき、専門家会議は完全スルーだったらしいが、今さらそれを否定するわけにも行かないので、学問的良心の許す範囲で「感染を広める可能性」という曖昧な表現にしたのだろう。岩田健太郎氏もいうように、専門家会議は「間違ったメッセージを送ってしまった」。

専門家会議は政策決定の場ではないが、政治家の暴走を止めることはできる。今からでも遅くないから「一斉休校が感染を止める効果より社会的コストのほうが大きい」という見解を明らかにし、安倍政権の暴走に歯止めをかけてほしい。