福島の原発事故で再生可能エネルギーが注目を浴びている。ポスト原子力の候補に挙げられたり、無用の長物あつかいをするものもいるが、私は主張する。再生可能エネルギーは農業、養殖などの食料生産(含むバイオマス)などに目的をしぼって使用すべきだ。理由を以下にのべる。
再生可能エネルギーには二つの特徴がある。
1.短所、原子力や火力に比べてエネルギー密度が低い。これは今後の技術革新を考慮しても変わらないと思われる。
2.長所、エネルギーの自給性が高い。日本において、海外にあまり依存しない数少ないエネルギーになりうる。農業、養殖などの食料の生産は、以上二つの再生可能エネルギーの特徴を生かせる分野だと私は考える。
まず1の電力密度の低さは、工業生産や大都市の電力供給には不向きだが、農業などの食料生産にはさほど影響をもたらさないと思われる。再生可能エネルギーの発電施設から近くの農場(ビニールハウスなど室内施設含む)や養殖施設やそれらの関連施設に電力を送電するあまった電力は近くの農家や漁民の家へ送電する。すなわち、自給性の高いエネルギーによって食料生産を行うことになる。この事は食料自給率という数字が信頼できるものになるということである。
いままでの食料自給率の数字はエネルギーを考慮においていないので外国のエネルギーによる農産物生産も自給率にカウントされていた。自給エネルギーによる食料生産によってはじめて自給率は正確な意味を持つし、それによって自給率向上という食料安全保障を正確に実行できると私は考える。
食料のみならず、トウモロコシや油を生成する藻のような農産物であるバイオ燃料も自然再生エネルギーによる生産の対象にすれば。ほぼ完全な自給燃料を手にすることになる。また、林業にも再生可能エネルギーの使用を考えるべきだが、紙数の関係でここでは論じない。
いままで論じた事は、原子力や化石燃料の即時の否定を意味しない。ただ、全土一律に同じクオリティー、密度の電力を供給する要があるのか、という疑問は提示しておきたい。おのおのの風土に合ったエネルギーのかたちがあるのではないかと考える。私の提案の狙いの一つは地方の農村や山村や漁村の振興策であり、農業や漁業の新規分野の開拓をめざすものである。
自然再生エネルギーは日本のエネルギー問題の最終的解決にはならないが日本の食料問題の緩和におおいに貢献すると考える。
(吉岡 研一 不二興産 会社員 )