日本時間の5月31日未明、アメリカ・フロリダ州のケネディ宇宙センターから、スペースX社が開発した民間宇宙船「クルードラゴン」が有人での打ち上げに成功しました。人類の宇宙探査・開発が新たなステージに突入した非常に象徴的な日となりました。
従来から言われてきたことですが、今後ISS(国際宇宙ステーション)に代表され、多くの衛星が飛び交う地球に近い宇宙空間は、主に地上でのビジネスに活用されることが今後ますます主流となっていくと思われます。
まさにそこは地上でのビジネスに不可欠なデータや通信などを司る空間ということで、地球圏の延長とも言えます。打ち上げのコストという意味でも、技術的な意味でも今後ますます民間が中心の空間となっていくことが予想されますし、マネタイズしていくべき宇宙空間です。
一方で、これまで宇宙関連技術の中心だった「国家プロジェクトとしての宇宙」は、その中心を月や月近傍拠点をベースにした火星、そしてそれよりも遠いより深い宇宙の探査に明確にシフトしていく。近年どんどん強まってきていたその潮流が、まさに見える形となったのが今朝の打ち上げのシーンだったのではないでしょうか。
そして、このような流れは何も宇宙だけにとどまりません。我々が当たり前のように「国がやるもの」、「政府がやるもの」と思ってきた領域が、今後急速に民間の多様なプレーヤーによって担われる、そんな時代がやってくることもまた明らかです。
「国民の税金を使ってプロの公務員が行う」ことにこだわらねばならない領域は意外に少ないものです。インフラ整備や医療、あるいは様々な行政サービス、そして途上国支援などについても、民間の技術やノウハウ、資金を活用できる部分については、その活用を積極的に行っていかなければ、今後、本当に政府が税金を使って取り組まねばならない分野に十分な資金や人材などのリソースを回せないことになりかねません。
感染症や戦争などの有事に際しては、歴史を振り返っても、どこの国でも政府や行政の役割が一時的に拡大する傾向があります。しかし、経済や暮らしへの政府の過度な介入は、短期的にはその時の国民の不安を解消するために必要なものであっても、長期的には社会の活力を失わせてしまうものです。それを緊急事態に応じた一時的なものとせねば、行政や政府の肥大化と国民負担の増大、社会全体の非効率化という過去の失敗の轍を踏むことになりかねません。
日本においては少なくともこれまでのところ、その宇宙政策の中で、比較的地球に近い宇宙空間については、民間セクターの領域・役割を可能な限り大きくしていこうという明確な方向性を示せないでいます。
もちろん、軍事的な、あるいはサイバーセキュリティの観点、ルールメイキングの観点から、政府や国際機関が関与すべき部分は確実に残りますが、民間への開放、民間の自由競争によるイノベーションを主役にという観点からは世界のトレンドから取り残されがちです。
そして、この点は宇宙だけではなく、政府の役割一般でみても、私自身、これまで政治家として様々な改革を進めようと頑張ってきたつもりですが、その中で、様々な分野において、従来の公的領域の再定義を行って民間の企業やNPO・NGOにも積極的な役割を担ってもらう、いわゆるコレクティブインパクトを最大化していこうという発想が政治全体でまだまだ弱い印象を受けています。
むしろ、民間領域においても、自由な競争や他者との差別化よりもなれ合いを好み、変化に対応した適切なリスクテイクを厭う風潮すら散見される現実があります。
宇宙だけではなく、政府のあり方、社会のあり方についても、新時代の幕開けを目指してシステムとして前向きなイノベーションを起こしていくことが必要です。
編集部より:この記事は、外務副大臣、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区)のブログ2020年5月21日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家 鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。