筆者は無印良品のスキンケア用品を愛用しています。肌に合い、価格が手頃、そして「安心感」があるからです。ところが今回の自粛で駅ビル内の無印良品は軒並み休業。手持ちが切れて大変困りました。「こんなときファミマで売ってたら…」と思ったものです。
そんな無印良品が、今度はローソンと提携するとの報道がありました。ローソンは日用品の品揃え充実、無印良品は販路拡大、が目的と推測されています。この目的は納得できるのですが、ひとつ疑問があります。
なぜ「ローソン」なのでしょうか?
・かつて提携していたファミマと「よりを戻せば」取引コストが節約できたのではないか?
・セブンイレブン等他のコンビニでもよかったのではないか?
これらの疑問を、無印良品側の視点から考察してみたいと思います。
なぜファミマと別れたのか
なぜ無印良品はファミマとの提携を解消したのでしょうか。
「ファミマ側の意向」との報道もありますが、無印良品にも相応の理由があったのではないかと思います。
無印良品とファミマの「馴れ初め」はセゾングループつながりです。いわば、親同士の縁による見合い結婚のようなもの。ですが、1970年代から2019年までの長期にわたって関係が継続したのですから、相性は良かったのでしょう。
ところが、2016年の澤田社長就任以降、ファミマの「性格」が変貌します。
澤田社長の好きな言葉は「気合いと根性」。その言葉通りの剛腕を発揮し、ファミチキ先輩やお母さん食堂といった派手なプロモーション戦略、ドン・キホーテやライザップとの提携など大胆な提携戦略を展開します。
結果、無印良品の地味(というより上品)なプロモーションと品質重視の戦略から乖離していきます。
決定的だったのがドン・キホーテとの提携に基づく「圧縮陳列」の採用(2020年02月終了)でしょう。
ここはドンキ?いいえファミマです あの陳列やってみた 朝日新聞デジタル
天井すれすれまで積み上げた商品。カラフルな手書きポップ。これらの横に自社の「良品」が陳列される…無印良品としては、絶対に避けたい事態だったのではないでしょうか。
つまり、
・ファミマの組織文化が大きく変容したこと
・提携を続けると、自社のブランド価値が低下すること
これが別れた理由ではないか、と推測します。
経営資源から見えるローソンの「お人柄」
ではなぜローソンだったのか、について考えてみましょう。
ローソンの傘下である「成城石井」と、販売形態である「ナチュラルローソン」に着目するとわかりやすくなります。
成城石井の理念は「おいしい、こだわった、安心・安全な食品を、世界中、日本中を歩き回り発掘、開発します」です。オリジナル商品は保存料・合成着色料・合成甘味料を使用してません。そのため健康志向の女性に評判が良いようです。
一方、ナチュラルローソンの理念は「美と健康をサポートするお店」です。こちらも、20代から30代の女性を顧客層とし、健康志向の商品やパンなどを揃えています。
成城石井とナチュラルローソンの共通点は
・ターゲット層として女性を意識していること
・健康や安心を理念としていること
です。
これらは、無印良品の「品質」から醸し出される「安心感」と共通するものがあります。
この二つの経営資源を持つローソンであれば、長くお付き合いできるのではないか。無印良品がそう考えたとしても不思議ではありません。
関係は深まるのか
無印良品とローソンの「同棲」期間は3か月。共同商品開発も検討するとのこと。どのような「子供」が生まれるのでしょうか。
無印良品の一ユーザーとして期待したいところです。
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関谷 信之(せきや・のぶゆき)中小企業診断士
生産管理・原価計算・管理会計等を中心にコンサル実施中。NOUV.BIZ