「世論調査」による「世論操作」

和田 慎市

写真AC:編集部

先週末、フジテレビ・産経新聞の世論調査において、繰り返し不正入力・操作が行われていた事実が明らかになりました。

NHKのニュース記事
フジテレビと産経新聞が謝罪 世論調査で電話せず架空回答入力

実際に不正入力・操作をしたのは下請け会社から再委託を受けた会社であり、フジ・産経が直接関与はしていませんでしたが、大手のテレビ局・新聞社が公式に行っている世論調査ですから、今回の不正はまさに国民を欺く行為と言えるでしょう。

結果的に他社の世論調査と比べ、際立った差異は見られなかったようですが、平均17%もの不正入力が1年以上14回も繰り返されていたことから、「世論調査業界」で不正入力・操作が常態化していたのではないか、という疑いも払しょくできません。

他のマスコミ(新聞やテレビ局等)が行う世論調査についても、下請け会社への丸投げやずさんな調査手法がとられていなかったか、一度全国規模の世論調査すべてを検証する必要があるのではないでしょうか?

この不正入力・操作は極めて重大な問題ではありますが、現行の世論調査手法そのものにも世論を正しく反映しにくい様々な問題があり、そのあたりを私自身のブログでも指摘しています。

このように、ただでさえ「世論調査結果」が、国民の世論を正しく反映しにくい傾向があるのに、データの不正入力・操作まで行われていたのなら、私たちは「世論調査結果」なるものを到底信用することはできないでしょう。
この世論調査の不正に関連して、ジャーナリストの木村氏がこんな寄稿をしています。

フジテレビと産経新聞の政治世論調査 委託先の下請けが回答2500件デッチ上げ 徹底した検証が必要だ

特に、世論調査機関の専門性と独立性、世論調査リテラシー、必然的な回答者の偏り(特に年齢)など、大事な点ではないかと思います。

例えば、

・独立した政治的に中立な専門家組織が「世論調査」を一括して行う
・聞き取り方法や回答手段の選択肢を増やす
・調査・質問内容、サンプル数と抽出方法、回答者の基礎データ、調査結果などを全面公開する

など、根本的に世論調査の手法を刷新しない限り、現行の世論調査では世論を正しく反映させることは極めて難しいと思われます。すでに日本のシステムは制度疲労を起こしており、今回のコロナ危機においても、学校・自治体・企業などいたるところでデジタル化・IT化への対応の遅れが図らずも露呈してしまいました。

政府や関係機関が公正な「世論調査システム」を速やかに構築するとともに、国民も耳障りの良い単純なフレーズを使ったプロパガンダなどに惑わされず、一人一人が情報(メディア)リテラシーを高め、国民自身の意思により世論形成していく必要があるのではないでしょうか。

和田 慎市(わだ しんいち)私立高校講師
静岡県生まれ、東北大学理学部卒。前静岡県公立高校教頭。著書『実録・高校生事件ファイル』『いじめの正体』他。
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