6月27日に東京都の新規感染者(PCR検査陽性者)は57人となり、緊急事態宣言解除後としては最高を記録しました。この新型コロナの感染者の多くが「夜の街」の関係者だと言われています。
不思議なことに、政府と東京都はさほど危機感を持っている様子はありません。テレビや新聞などのマスコミも、以前とは違って冷静さを保っているようです。
それは、PCR検査能力が大幅に増強されたため、無症状者が以前より多く発見されるようになったからでしょう。毎日の数字をチェックしてみても、相談者、重症者、あるいは死亡者が増えたとか、状況が悪化している様子は見られないのです。
参考までに、6月の空港検疫では、無症状者は有症状者の約30倍も発見されています。
東京都のPCR検査件数は増加している
5月25日に緊急事態宣言が全面的に解除され、6月14日からは都内の「夜の街」の営業が解禁されました。これを受けて、東京都は新宿区で重点的に集団検査を始めたようです。
たとえば、6月15日の産経新聞にはこう紹介されています。
新型コロナウイルスの感染者の増加が続く東京都で15日に48人、14日に47人の新規感染者が確認された。5月25日の緊急事態宣言解除後では2日連続で最多を更新した。
小池百合子知事は14日、「無症状の方も積極的に検査した結果。感染を自覚し、人に感染させないことにつなげたい」と説明し、感染者把握の経緯が従来と異なるとの認識を示した。
5月以降、感染者数が収束傾向になり、検査態勢に余裕が生まれているのも大きい。今月8日には、解除前も含め最多の2255件の検査が実施された。
東京都、宣言解除後最多の48人感染 ホストクラブで検査徹底 早急収束狙い(産経新聞 6月15日)
この結果は、現実の数字にも如実に反映されています。歌舞伎町などで集団検査を始めた6月14日から、新規感染者が明らかに増加しているのです。これと符合するように、PCR検査件数は6月からの増加が目立っています。
一部の人は、この数字を見て第2波が来たと驚いているようですが、そういう可能性は低いと言っていいでしょう。仮に、本当に第2波が到来したとするなら、相談件数が増加するはずです。事実は反対で、相談する人は一貫して減少傾向を示しています。
念のため、重症者、入院者、そして死亡者の数を調べてみると、いずれも特に増えている様子はありません。
参考までに、新規感染者が増えているのは東京圏だけで、日本全体の8割程度を占めています。関西圏では新規感染者の増加はさほど目立たず、PCR検査件数も1桁程度少なくなっています。
東京都の相談件数とPCR検査の件数を比較すると、興味深い事実が浮かんできます。いままでは、相談件数は必ずPCR検査件数より多かったのですが、6月に入ると数値が逆転しているのです。これは、相談件数が減ってPCR検査能力に余裕が生まれ、その結果として集団検査が始まったということでしょう。前出の産経新聞の記事も、このことを裏付けています。
PCR検査陽性者は感染確定者1.8万人の数十倍か
では、本当にPCR検査陽性者には無症状者がそれほど多いのでしょうか。
このことは、次の2つの事実から裏付けられます。
- 空港検疫では、無症状者は有症状者の約30倍
- ソフトバンクの抗体検査では、医療関係者の抗体保持率は一般の約10倍
順番に説明しましょう。
海外から入国する場合には、欧米などの「流行地域」に滞在した人は、必ずPCR検査を受けることになっています。このデータを厚労省の6月発表分からチェックしてみます。
結果ですが、無症状者は有症状者の約30倍となりました。具体的には、6月1日から27日までの空港検疫で112人の陽性者が発見されましたが、発熱などの症状が見られたのは4人だけです。
現在までに報告された感染者は1万8,000人程度で、その多くが有症状者です。しかし、無症状のPCR検査陽性者はこの何十倍も存在する可能性があるようです。
次に行きます。
ソフトバンクの調査(概要、資料)によると、医療関係者では一般人の0.23%に比べると約10倍の1.79%が抗体を持っているという結果になりました。
つまり、新型コロナに感染しやすい職業が存在し、そういう人を集中的に検査すれば、大量に無症状者が発見される可能性があるのです。仮に、「夜の街」の関係者に無症状者が多いとすれば、集団検査で大量の無症状の陽性者が出ても不思議ではありません。同じように、医療関係者に集団検査をすれば、多くの陽性者が発見されるかもしれません。
北海道では、大規模クラスターは病院や高齢者向けなど、特定の施設で目立つことも、これを裏付けていると思われます。
クラスター止まらぬ北海道、「昼カラ」含め新たに6か所(読売新聞 6月25日)
日本で感染が少ないのは自然免疫のため?
ひょっとして、これらの事実は、日本で感染が少ない原因が自然免疫であることを示しているのかもしれません。
理由は次のとおりです。
仮に、東京都民全員にPCR検査を実施したとします。現在の陽性者は6,000人ですから、単純計算では30倍の18万人が陽性である(だった)ことになります。厚労省の調査によると、抗体を持っているのは全都民1400万人の0.1%なので、PCR検査陽性者(推定値)より1桁少ない1万4,000人となります。このように、感染した人の1割程度しか抗体が作られないとすると、残りの9割は「自然免疫」で治癒したとしか考えられません。
となると、状況がよほど変化しない限り「第2波」が到来する可能性は相当小さいのではないでしょうか。
このように、データを丹念に追っていくと、いろいろと意外な事実が見えてくるものです。ただ、以上は単なる私の仮説にすぎません。今後とも別の角度から検証が行われ、多くの真実が明らかになることを切に願っています。