JR東日本が運賃にダイナミックプライシングの導入を検討するそうです。ダイナミックプライシングは、物やサービスの品質ではなく、消費者の需要と供給量によって変動させる価格のことです。ではなぜ今、JR東日本がダイナミックプライシングを検討するんでしょうか。
それは新型コロナウイルスの感染拡大によって鉄道需要が大きく下がったからです。先月6月のJR東日本の鉄道営業収入(前年同月比)は、前年度比で56.5%でした。6月はまだマシで、5月は30.4%、4月は25.9%だったようで、4月と5月の定期券以外の減収は約1,000億円でした。新型コロナウイルスが収束すれば需要はまた戻ってくるとは考えられます。
しかし、テレワークや在宅勤務が一定の割合で定着すれば、以前と同じ利用客数は見込めないでしょう。これからの鉄道事業を考えたときに今回の検討も必要でしょう。
同じ交通事業者でも航空業界では当たり前ですね。正月や夏休みなどの繁忙期は高く、閑散期は安い値段に設定されています。海外に目を向けると、アメリカの高速道路は基本的には無料ですが、急ぎたい人のための優先レーンを有料に設定している場所もあります。
ですから、JR東日本の検討も非常識ではないと思います。通勤利用の場合は会社が交通費を出しますから、ダイナミックプライシングが導入されれば働き方改革もさらに加速するかもしれません。
ネット経済が発展をしてきてからは「ダイナミックプライシング」という言葉も使われるようになって、アメリカなどでは様々な業種に広がっています。例えば、以前紹介したuberでは雨の日の料金設定が高いということもあります。
それから、人気のアーティストのコンサートやプロスポーツの観戦チケットは日によって値段が変わります。日本のプロ野球も最近は対戦カードによって値段が違いますよね。思い起こせば昭和の時代は巨人戦だけが高かったです。日本のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)も昨年から導入しました。
ただ、誰にとっても生きてくために必要な必需品にダイナミックプライシングを導入するのはどうかなと思います。食料品とかあるいはコロナを振り返ってみれば、トイレットペーパーとか。トイレットペーパーが中国から入ってこなくなるというデマによって、店頭から一気になくなりましたよね。
もしもあれがダイナミックプライシングになっていたとすれば、金持ちしかトイレットペーパーが買えないじゃないかということになってしまいます。ですから、ダイナミックプライシングに適しているものやサービスもあれば、そうじゃないものもあると思います。おかしな値付けをすればその企業は批判されるでしょうし、信用問題にもなるでしょう。
そういえば、今年はすでに中止が決まっている青森のねぶたまつり、数年前に観に行きました。その際、テレビコマーシャルをやってて、誰もが知っているブランドのホテルに泊まりました。青森にとっては年一回のハイシーズンですからホテル代が高いのは覚悟してました。
予約が遅かったため、そこしか空いてなかったその部屋は、ひと部屋5万円。築40年は経っているその建物は、これまたよく知る昔ながらのビジネスホテルを、今のブランドが買い取り、運営していました。宿泊した部屋はとても狭く、ベッドが部屋の9割を占めているから、冷蔵庫が7割程度しか開きません。
さらに、ほんの小さなスペースにバス、トイレ、洗面所がぎっしり詰まっていました・私は、「これで5万円かよ」と思いましたが、チェックインした時に「ねぶた祭りだからしょうがない」と思ったんです。その夜、部屋に帰ってドアを開け、電気をつけたら何かが動いたんです。それがゴキブリだっていうんで、私は叩き潰し、自分で始末をつけました。
翌朝、お金を払い、何も言わずに立ち去りました。私はその時、「いくら繁忙期でもこれ、物には限度がある」って思いました。そしてもう一つ、「もう二度とそのブランドには泊まらない」と、心に決めました。実際に、それ以来、そのブランドのホテルは使っていません。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年7月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。