10日、枝野幸男氏との一騎打ちに敗れたものの、立憲民主党と国民民主党の合流新党の代表選挙に立候補していた泉健太氏。大手メディアであまり報道されないので、スポットを当ててみたい。
年齢は47歳。衆議院議員。京都3区(京都市伏見区、長岡京市、向日市、大山崎町)選出。北海道出身で、少年時代は野球に励む。関西の立命館大学へ進学後は、弁論活動、ボランティア活動に熱心に取り組む。法学部卒業後、福山哲郎参議院議員(立憲民主党)の秘書を務めた。
29歳で第43回衆議院議員に当選。「次の内閣」子ども・男女共同参画担当副大臣、政権交代後、民主党で内閣府大臣政務官。前回の衆議院議員選挙では希望の党より立候補して当選、国民民主党国対委員長、政務調査会長などを歴任。ちなみに、あの宮崎謙介元議員と小選挙区で戦っていたこともある。福祉施設職員の経歴も。
今回掲げた政策
コロナが収まるまで消費税減税、凍結と発言するなど、なかなか大胆な政策を掲げた。細かく見てみよう。
- コロナ対策・経済対策:物価上昇率2%に至るまで消費税をゼロ%に凍結。(主たる財源は国債)
- 子育て・教育・最低保障年金:最低保障年金(ベーシックインカム年金)の検討
- 働き方・人権:地方中小企業への支援を前提に、最低賃金の引き上げと全国一律化。女性差別撤廃条約選択議定書の批准。
- 産業・地域政策:社会のデジタル化・グリーン化を推進。新技術・製品分野の世界標準化推進と基礎研究を重視。
- エネルギー:省エネ、蓄電、再エネ技術の推進により原発・火力依存度を低減し、分散型エネルギー社会を推進。原子力エネルギーの着実な縮減に向け、立地地域の雇用・経済対策、使用済核燃料の最終処分などへの国の責任の明確化、廃炉作業を担う人材の育成を推進。
- 農林水産業:農業者戸別所得補償制度の復活。主要農作物種子法の復活。
- 外交・安全保障・防災:安保法制の違憲部分は白紙撤回。日米地位協定を見直す。
- 憲法・政治行政改革:憲法の基本的理念と立憲主義を維持しつつ、未来志向の憲法を議論。政権による恣意的・便宜的な憲法解釈の変更は認めない。公文書管理の抜本的見直しと情報公開の拡充等による行政監視機能の強化。
なかなかバランスが取れている。
特徴は3つ。第一に、行政改革の魂を持っている点だ。特別会計の見直し、天下り規制の強化、官製談合の防止、随意契約の制限、公文書管理の抜本的見直しと情報公開の拡充等による行政監視機能の強化など、安倍政権への「まっとうな」批判と言ってよい。石破茂さんより鋭い。
第二に、問題解決の視点である。これはインタビューや改憲などで様々な発言からうかがえる。孤独対策を日本で初めて政党の主要政策に掲げて実績もそれを物語っているといえよう。また、地域主権改革など最近忘れられた政策をリバイバルさせてきた。
と発言。自民党の各候補は東京一極集中については言及するようになったが、国の中央集権からの脱皮についてはあまり言っていない。それと比較して、特徴的だ。
第三に、イデオロギー色が薄い。「新自由主義が・・・」という枝野さんと対照的に、「それはあなたの価値観では?偏った理念にこだわってない?」と突っ込みたくなる場面が少ない。「(憲法の)政権による恣意的・便宜的な憲法解釈の変更は認めない」「安保法制の違憲部分は白紙撤回。日米地位協定を見直す」など基本は抑えつつ、安倍政権へくぎを刺す。どちらかというと憲法改正賛成といい、時代に合わせて改正するべきなどなど現実的な、現場感のある政策が並ぶ。作った政策をきちんと運用させることにしっかり目線が向いている。
木材自給率の向上、「sharp power」として全体主義国家として世界に台頭する中国への具体的な言及がないので、そこは残念であった。
具体的な行動と発言
希望の党の時に、比例代表候補の選考過程の不透明さを批判したり、「党に集う仲間の力が存分に発揮される、 民主的な組織と運営」を主張するなど一貫した正義感を持って行動していると伺える。
質問主意書は計3本。動物霊園(ペット霊園)事業、ヒト胎盤エキス含有製品の安全性、「STAP細胞」論文に係る第三者機関による再調査及び検証実験などである。
発言を見てみよう。
「今私が言った外国人の土地所有、全てが悪いということじゃないんですが、一時期は、国の重要施設の隣を買収してしまったケース、あるいは水源地の確保と見られるようだけれども土地利用の意図がよくわからないケースというのもございました。(中略)外国人の場合に、事実上、納税管理人を置いていないケースがあるというふうに聞くこともあるんですが、そういったことを聞かれたこと、あるいは認識、把握はされていますでしょうか。(中略)納税管理人制度、特に外国人の方に関して、これは申請をして認定を受けるということにもなっていたり、申請をして承認を受けるということにもなっていたりするような条文になっておりますので、これがしっかり適正に行われているかどうかということについては、ぜひ総務省として調査をしていただくことも考えていただいてよいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。」(第193回国会 衆議院予算委員会第二分科会、平成29年2月22日)
ネトウヨでさえ拍手をするようなことを言っている。とはいえ、「多文化共生」を重視しつつ、社会では「歴史や伝統を大事にしたうえで」「他国の文化・風習を尊重しつつ接着していく」「それことが政治家の役割」と現実にあった考えを持っているのが特徴だ。
また、「自助という精神は大事だが、自己責任という言葉に完結させてはいけない」という思考からもバランス感覚の良さがうかがえる。
党の代表選で唯一の若手に希望!
「国民に愛される政党」「追及、批判だけではない政策を伝える」「提案型の野党」と掲げて今回の代表戦を戦った。
「自己実現のために政治をしているのではない」と発言する若手。権力を握りたい、出世したい、政治家になってプライドを満足させたい….という旧来の政治家とは一線を画す。そこに可能性を感じる。
今回の選挙では強い注目をされなかったが、今後の活躍を期待したい。
【注】 本稿に示された意見はすべて発言者達個人に属し、その所属する組織の見解を示したものではありません。特定個人を応援する目的で記載していません。