今週のメルマガ前半部の紹介です。大手広告代理店の電通が40歳以上の社員を対象に「早期退職させた上で業務委託に切り替えるプラン」の募集を開始することが話題となっています。
【参考リンク】電通、社員230人を個人事業主に 新規事業創出ねらう
「業務委託に切り替えるわけだからていのよいリストラではないか」と連想する向きも多いように見えます。
本当に業務委託化はリストラの一環なんでしょうか。そもそも、なぜ同社は40代以上にこうした施策を行う必要があったんでしょうか。良い機会なのでまとめておきましょう。
人事部最大の懸案事項「消化試合25年問題」
人というのは、上がり目が無くなるとやる気も無くなる生き物です。では日本型組織において、普通の人は何歳くらいからやる気をなくすものなんでしょうか?
「課長選抜が終わる40歳くらいからだ」という人事は多いですね。「部課長になっても50歳くらいから惰性でまわすようになる」という人もいます。
ここは間を取って45歳くらいから、としましょう。
かつて定年は55歳が一般的でした。だからたとえ45歳すぎてやる気を失う人が出現しても「まあしょうがないよね、あと10年くらいだし」で済んだわけです。
しかし1998年に定年が60歳に引き上げられ、2013年からは65歳への段階的引き上げが始まりました。そして21年4月からはさらに70歳雇用が企業に努力義務として課されることが確定しています。
45歳くらいでやる気なくなった中高年を、下手をすると企業はあと25年も面倒見ないといけないわけです。筆者はこれを「消化試合25年間問題」と呼んでいます。はっきりいって日本企業の人事が直面する最大の課題と言っていいでしょう。
しかも真面目に勤続していればほとんどの人が管理職ポストにつけた90年代と違い、過半数がヒラのまま放置されている現在、やる気を失っている中高年の絶対数そのものが増大していることが予想されます。筆者の感覚だと大企業は3割から4割くらいはそんな人たちを抱え込んでいるように見えますね。
ではどうするか。早期退職で数を減らすのは一つのアプローチでしょう。昨年から業績の好調な大手企業が早期退職を募る“黒字リストラ”が話題となりましたが、あれなどはまさにそうした予防策の走りと言っていいでしょう。
【参考リンク】「黒字リストラ」拡大、19年9100人 デジタル化に先手
ただし、「数を減らす」以外にもまったく別のアプローチもあります。それは中高年層にやる気を出させることです。
先に筆者は「人間はそれ以上の上がり目が無くなるとやる気も無くなる」と書きました。だから副業や起業といった形で“上がり目”を作り出してやることで、もう一度やる気をリブートさせるわけですね。
電通やタニタの業務委託シフトというのは、それをもっとも柔軟な形で後押ししようという施策なわけです。黒字リストラのようなリストラプランの対極と言っていいでしょう。
副業のメリットについて言及すると、しばしば「本業が疎かになるんじゃないか」みたいなことを言う人がいます。
逆に聞きたいんですけど、そもそもその“本業”って、みんな真面目にやってるんですかね?昼間はぼーっとして夕方から本気出したり、やらなくていい会議連発して存在感出してる人間っていっぱいいるんじゃないですかね?
じゃなきゃ日本の労働生産性がこんなていたらくにはならないでしょう(苦笑)
要は業務委託化というのは会社が「50代60代になってもいろんなところから金引っ張ってきて遊びまくってるギラギラした中高年になれよ」と尻を叩いているようなものなんですね。そういう中高年がいっぱいいる会社の方が、下の世代から見ても楽しそうな気がするのは筆者だけでしょうか。
以降、
リストラかどうか判断するポイントとは
市場における自身のニーズを把握することの意味
Q:「リモートワークは週に何日くらいが理想でしょうか?」
→A:「週2日出勤という企業が多い気がします」
Q:「今の新人の10年後がちょっと心配です」
→A:「プラスになるかどうかは彼ら次第でしょう」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2020年12月24日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。