勝ち組、負け組ではなく「引き分け組」を目指す

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1都3県に緊急事態宣言が発令される可能性が極めて高くなった。今回は飲食店に関する営業時間短縮要請が主なものとなり、期間は1ヶ月程度だと見られている。3連休を前に発令されることになりそうだ。まだ正式な発表はない。

つきなみな表現ではあるが、感染症対策として有効で、経済活動に対するダメージが少ないものを期待したい。教育、保育、介護への影響を最小限にして頂きたい。主夫の視点で言うならば、なんせ保育園がどうなるかが気になるのだが(あくまで利用者視点として、仕事と両立するために、ということなのだが)。教育者視点で言うならば、学生が安心して講義を受けられること、経済的な影響を受けないこと、心の悩みを抱えないことを祈るのみであり、そのためのできる限りのことをするつもりでいる。

もっとも、一生活者視点で言うならば、まったく動じていない自分がいる。withコロナ時代とは、まるで台風や地震、大雨のような災害、天災がたまに起こるように、感染拡大による緊急事態宣言などが日常的に起こる時代なのだと覚悟している。主夫として、うまくやりくりするつもりでいる。前回の緊急事態宣言の際には、家事・育児に追われ精神的にも息詰まってしまったが、今回は心と身体の健康を第一にするつもりである。

さて。

コロナ関連で発せられる「勝負」「打ち勝つ」という言葉が気になっている。年末には「勝負の3週間」という言葉をよくメディアで見かけた。少なくとも1都3県においてはコロナ関連の各種指標は悪化していると思うのだが、正式な敗北宣言は今のところ聞いていない。

菅首相がよく発する「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証としての五輪開催」という言葉も気になっている。各国でワクチンの接種が始まった。日本でも2月下旬には始まる見込みである。ただ、それをもってしてでも、以前のような生活が半年後に戻ってくるイメージがわかないのはどういうことだろう。首相は新型コロナウイルスではなく、五輪中止・延期論に打ち勝とうとしているようにすら見える。

とはいえ、我々市民も、日々なんらかのかたちでウイルスと闘っている。勝ったのか、負けたのか。感染したら、これで収入が激減したら負けなのかとモヤモヤしつつ。

勝ち負け論とはやや違うが。通底する話として。年末にバズっていた、ビジネスインサイダージャパンの竹下郁子記者のこのツイートについて、色々考えていた。前後のツイートもみたし、様々な人から批判的なメンションがきた流れでのツイートだったのかもしれないが。少なくともこのツイートには私は賛同できないし、ご自身の仕事や、サイト、さらにはジャーナリズムそのものの否定にも聞こえる。杉田水脈の「LGBTは生産性がない」ともつながる話ではないか。

もっとも、昭和、平成、令和と「自由で柔軟な働き方」「雇われない生き方」などが提唱され、自己啓発の論理からも、「世の中金じゃない論」が何度も流行るのだが、金以上の何かを生み出せたかどうかは疑問である。日々、私たちもなんとなく「勝ち負け」を考えて生きていないか。たとえば、年末年始は本来であれば同窓会シーズンだが、リアルな同窓会でも、ZOOMでも、この手のイベントにやってくるのは、それなりにお金に余裕がある人や、今の自分に自身がある人や、よっぽど愛校心がある人だったりもし。友達はかけがいのない存在だが、気持ちよく再会するには「金」が影響しているも事実ではある。もっとも、それでも存在価値=金という考えには賛同できず。だから、個人も、なんらかの組織も、社会も模索を続ける。考えるキッカケにはなった。

さて。

あくまで個人的な処世術として私が考え、実践しているのは「勝ち」「負け」以外の概念も検討するべきだということだ。「勝つ」の反対は「負け」だが、それ以外の状態もあって。「負け」と「劣勢だが負けていない」のは違い。また、時系列で考えなくてはならず。また、「勝ち」「負け」ではなく「引き分ける」という手もある。

私が人生で大切にしていることは「いかに、引き分けるか(勝たなくてもいい)」「負けないか(いま、負けていてもいい」ということであり、「中空飛行」である。これは、withコロナ時代に消耗せずに乗り切る大事な姿勢だと信じている。

『さよなら、意識高い系(仮)』 第1話「謝罪ポエム問題」

というわけで、いままでどおり、息抜きしながら生き抜く。息抜きといえば、今年から始めた、このnoteの小説連載。これも大事な息抜き。フォロワー数も、「すき」も少ないが、これぞ「引き分け組」のナイスな息抜きとして読んで頂きたい。

さ、スーパーやドラッグストアに並んだりせず、焦らずに、いきますかね。今日も中空飛行。浪漫飛行よりも中空飛行なんだぜ。


編集部より:この記事は千葉商科大学准教授、常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2021年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。