【更新】2月1日の東京の新規感染者数は393人。最近7日間の新規陽性者数を合計すると40人(10万人あたり)です。きょうは2.8人で、このペースだと今週は図1の「ステージ3」の上限25人を下回る可能性が強い。2日に緊急事態宣言の延長を決めるのは早すぎると思います。
政府は2月6日までの緊急事態宣言を延長する方針だそうです。野党もマスコミも「もっとやれ」という話ばかりですが、日本は本当に緊急事態なんでしょうか。
Q.1 緊急事態ってどういう意味ですか?
政府の新型コロナ対策分科会は、感染状況を判断する目安として6分野の指標を示していますが、そのうち大事なのは新規感染者数と病床使用率です。感染状況は4段階にわかれ、もっとも深刻なステージ4では緊急事態宣言が必要だとされています。
図1 緊急事態宣言の基準
日本経済新聞の集計では、今回対象になっている11都府県のうち、ステージ3になっているのは栃木県だけです。これではたしかに緊急事態宣言の解除はむずかしいですね。
Q.2 ステージ4ってどれぐらい深刻なんですか?
新規感染者数が10万人あたり毎週25人というのは1日3.5人。全国の新規感染者数は毎日3.1人(10万人あたり)で、これはアメリカの1/15です。ドイツでは毎週50人未満になったらロックダウンを解除することになっています。図1では東京だけがこれを上回っていますが、今は38人です。日本のステージ4は、世界的にみるとロックダウンを解除する「収束」レベルなのです。
図2 新規感染者数(10万人あたり)
Q.3 病院は大変だと聞いていますが?
図1のように病床使用率は50%を上回っていますが、これは分母のベッド数が少ないことが最大の原因です。東京都の調べでは重症患者141人に対して確保したベッドは265床ですが、東京には3000台以上の人工呼吸器があります。それに対して人工呼吸の実施件数は約100件。97%の人工呼吸器は使われていないのです。
Q.4 なぜそんな状態で「医療が崩壊する」と騒がれるんでしょうか?
問題は、こういう設備が多くの病院に分散し、その8割が民間病院なので東京都が指示できないことです。これはよい子のみなさんにはわからない大人の事情ですが、コロナ患者を受け入れると「あの病院はこわい」という噂が立って患者がこなくなるので、「人が足りない」などといって断る病院が多いのです。これは都立病院をコロナ専門病院にしてコロナ患者を集中し、他の患者を民間病院に転院させれば解決できます。
Q.5 コロナで死ぬ人は増えてるんですか?
去年11月までの人口動態速報をみると、図4のように2019年に比べて去年の(すべての原因の)死亡数は1万5000人ぐらい減っています。死亡数は高齢化で毎年1万5000人ずつ増えていたので、これは予想に比べると3万人ぐらい少ない。昨年はコロナの死者が2000人ぐらいだったので、その他の原因で1万7000人ぐらい死者が減ったことになります。
図4 死亡数(人口動態速報)
Q.6 なぜこんなにコロナで大変だといわれているとき、死者が減ったんでしょうか?
考えられる一つの原因は、図5のように肺炎の死者が大きく減ったことです。これは8月までの数字ですが、肺炎だけで約1万人、インフルエンザなどの呼吸器系疾患を合計すると1万5000人ぐらい減っているので、年間では2万人以上減ると思われます。他方でコロナ死者は年間でも3500人程度なので、全体の死亡数が大幅に減ったのです。
図5 主な死因(人口動態統計)
Q.7 コロナ以外の病気の死者が減ったのはなぜですか?
それは死因をくわしく分析しないとわかりませんが、コロナ対策で病院や介護施設の高齢者を隔離し、肺炎球菌やインフルエンザウイルスなどの感染が減ったためでしょう。図6のように国立感染症研究所の推定(昨年10月まで)では、すべての死因による超過死亡数(実際の死者数-推定死者数の上限)は大幅なマイナスになっています。
図6 日本の超過死亡数(国立感染症研究所)
Q.8 死んだ人は平年より何人ぐらい少なかったんでしょうか?
それは感染研が数字を出していないので、正確なことはわかりませんが、この図からみると平年の推定値(ベースライン)に比べて2万人ぐらい、閾値に比べると4万人以上少ないと思います。人口動態ベースでも、Q.5でみたように平年より3万人ぐらい少なかったと思われます。
Q.9 それは他の国に比べて少ないんでしょうか?
たとえばアメリカでは、実際の死亡数(棒グラフ)が閾値(赤線)を大幅に上回り、年間37万人ぐらい超過死亡が出ましたが、そのうち30万人がコロナの死者だと推定されています。日本ではこの棒グラフと閾値の関係が逆転していることに注意してください。
図7 アメリカの超過死亡数(CDC)
Q.10 緊急事態宣言は続けるべきでしょうか?
コロナは確かにこわい病気です。アメリカでは第2次大戦以来最大の死者が出たといわれていますが、欧米と日本のコロナは被害の規模がまったく違うのです。比べるなら海外のコロナではなく、国内の今までのインフルでしょう。平年インフルで3000人~1万人ぐらい超過死亡が出ます。大流行して3万人以上も超過死亡が出た年もありました。
図8 インフルエンザの超過死亡数(国立感染症研究所)
でもインフル防止の対策としてやったのは学級閉鎖ぐらいで、飲食店が休業したりしなかった。この程度の流行でいちいち経済活動を止めていたら、日本社会は壊れてしまいます。日本の感染症対策は、死亡数が純減するという世界にもまれな大成功だったのです。菅政権は自信をもって「日本政府はコロナに勝利した」と宣言し、2月6日で緊急事態宣言を終えるべきです。
ご意見はアゴラサロンへ(2月末まで無料)。