選挙二題

ここにきて衆議院解散選挙の話題が再び上がってくるようになりました。3月の下村博文政調会長発言や森山裕国対委員長の行動、更には二階幹事長が4日にテレ東の番組で「内閣不信任案が提出されたたら解散で応じる」と述べたことがあるでしょう。これには伏線があり、立民の安住淳国対委員長が戦闘意識をあらわにし、内閣不信任案を今年出さなくていつ出すのか、という姿勢にあるからです。

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ただ、野党内でもコロナも収まらず、オリパラもあるのに内閣不信任案を出すタイミングも難しい、という意見が主流のようで結局、解散総選挙の風は二階氏と安住氏の「やじの応酬」からくるものに近いものではないかという気がしています。

解散権は首相にあるとされるので二階氏がどれだけ何を言っても菅氏がどう判断するかであります。もちろん、菅氏は二階氏に背けない関係でしょうから解散が必要だというタイミングになれば踏み込むかもしれませんが実情は極めて難しいと思います。

菅首相が訪米して4月16日のバイデン大統領との会談をこなした後の4月下旬は最速のケースとしてささやかれている日程です。しかし、今、コロナの行方がさっぱりわからない中で解散をすれば国民の総スカンを食らうでしょう。その次のタイミングはオリンピック前になりますが、そんな時期に解散などしたらただでさえ海外選手がオリンピック参加に及び腰で微妙なときに政治空白を作るのは愚の骨頂。とすればパラリンピックが終わる9月5日までは無理、ということになります。

野党も内閣不信任案を出しても否決され、かつ、解散も実際にはないとなれば「空振り」は確実であってそんな弾は打たなくてもよい、というのが私の思うところです。海外から見ると日本は選挙がただでさえ多く、政治ショーとなっているのにそれを囃すのはメディアだけというちぐはぐ感がいただけません。そもそも解散総選挙で何が得られるのか、政治家の党利党略と国民意識があまりにもかけ離れていると言わざるを得ません。

さて、もう一つの選挙は韓国で今週7日に行われるソウル市長選とプサン市長選であります。現状、両市長選とも野党候補が与党候補に15ー20ポイント程度の差をつけ有利になっています。野党候補というより文政権への恨み爆発という状況になっています。特に「不動産問題」は国民にとって大きな関心事となっていますが、例えばソウル市長候補で与党「共に民主党」の朴候補はニュースキャスターをしていて知名度抜群である一方、日本に不動産を持っていることが暴かれ、ネガティブキャンペーンが繰り広げられているのが実情です。

この結果は数日中にわかるのでその結果を踏まえ文政権がどう反応するか、それ以上に民情が非常に強い韓国で反文政権の動きが一気に加速するようなことになれば政権の支持基盤が崩れる公算もあります。

日本の選挙日程と韓国の選挙を絡ませて考えることは一面では意味があります。それは仮に文政権の失速が明白になれば来年の大統領選で韓国の顔がどのように変わり、中国とアメリカとの二股外交にどのような姿勢を見せるかによって日本の外交に影響が出るからです。ひいてはアメリカと中国の対韓国への外交姿勢が否が応でも日本に影響を与えるという意味でもあります。

韓国もワクチン普及率がOECD最低レベルで社会的不満があります。とすればワクチン不満が選挙にどのように影響するのか、そして仮にソウル、プサン両市長選で市民がその不満のはけ口を見出そうとしたらならば菅政権は恐ろしくて解散総選挙に打って出るなど考えもできなくなります。

日本の選挙に於いて唯一の問題は日程的に自民の総裁選が先にあり、衆議院任期満了がそのあとにくることであります。菅氏としては国民の信を一度も問いていない以上、衆議院選をせずに総裁選で菅氏を押し込みたくはないかもしれません。しかし、それは菅氏を継投させるという前提。大胆ですが、外交に興味がない実務肌の菅氏はワンポイントリリーフで終わり、新総裁を顔に衆議院選に臨むのもあり、でしょう。菅氏はとにかく外交が苦手なのでオリンピック後は米中韓を中心とした極めて繊細な外交手腕が求められる中、菅氏はよくやったとたたえられて下りるのも戦略だと思っています。

この辺りは政治手腕とコロナ、オリンピックの結果次第となりますが、9月5日直後の衆議院解散は総裁選日程を考えると物理的な問題が生じます。結局何も起きず、衆議院期日満了を迎えるという過去に1度しかない非常に珍しいケースが起きる気がします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年4月6日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。