国際エネルギー機関の報告書「2050年実質ゼロ」が、世界的に大きく報道されている。
この報告書は11 月に英国グラスゴーで開催される国連気候会議(COP26 )に向けての段階的な戦略の一部になっている。
IEAの意図は今年1月に発表されていた。ただその時点では、メディアはコロナ一色で、全く取り上げられることは無かった。
「国際エネルギー機関は本日、2050年までにエネルギー部門が実質ゼロ排出を達成するための世界初の包括的なロードマップを作成する、と発表しました。これにより、世界のクリーンエネルギーへの移行におけるIEAのリーダーシップがさらに強化されます。」
このIEA の計画は英国政府の要請によるものだ:
「COP26議長国(=英国)の公式の要請に従って、IEAは、2050年までに世界の実質ゼロ排出を達成するための、エネルギー部門の包括的な道筋を示す。新しい特別報告書は、政策の必要性、技術開発・普及のニーズ、必要な投資、経済的な便益および幅広い影響を調査する。
新しい特別報告書”2050年までの実質ゼロへの世界のロードマップ”では 、エネルギー部門を完全に脱炭素化し、1.5℃の気温目標に沿った軌道に乗せるために、政府、企業、投資家、市民に必要な行動を詳細に説明する。 これは、世界的なエネルギーと気候の目標を達成するための取り組みを支援する一連の新しい IEA のプロジェクトの一部である。」
COP26の議長を務める英国のアロック・シャーマもその意図を述べている:
「この新しいロードマップは5月18日にリリースされる。これは英国が議長を務めるグラスゴーでのCOP26サミットに政治的な勢い(モメンタム)をもたらすものだ。2050年までに世界の実質ゼロ排出を達成する道筋を示すIEAの計画は、気候を守る行動のための重要な一歩である。これにより、目標を達成するために各国が個別にまたは協力して取らねばならない行動を明らかにするものだ。」
報告書の中身は太陽光発電・風力発電や電気自動車の大量導入など、過激な環境運動家が言っていることと全く同じだ。特に「石油・天然ガス開発は今後は不要」などとしている点が注目され報道された。
元来、IEA は1973 年の石油危機を受けて、OPECに対抗するために設立された先進国の組織である。OPECによる石油の供給途絶や価格上昇に備えるために、先進国の石油開発を進め、石油備蓄を行い、省エネルギーを進め、また代替エネルギーとして石炭、天然ガス、原子力、太陽光発電などを推進してきた。
しかし今般の報告書を見ると、IEAは過激な環境運動組織に乗っ取られてしまい、エネルギーの安定供給を脅かす存在になってしまったようだ。
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