緊急事態宣言が21日にやっと解除されますが、まん延防止措置は残るので、飲食店の営業は制限されたままです。アメリカのニューヨーク州では、ワクチン接種が70%終わって行動制限を解除し、花火大会でお祝いしていますが、日本はそれより悪いのでしょうか。
Q1. 超過死亡って何ですか?
テレビでいう「新型コロナ死者数」は、厚生労働省の発表した感染症統計の数字です。これはPCR検査で陽性と判定された人が亡くなった人数を集計したもので、主な死因がコロナとは限りません。それに対して超過死亡は、すべての原因で死んだ人が平年より何人多かったかという人口統計の数字で、誤差が少ないのです。去年増えた超過死亡のほとんどは、コロナだと思われます。
Q2. 世界の超過死亡はどうだったんですか?
WHO(世界保健機関)は2020年の世界全体のコロナによる超過死亡は、約300万人と推定していますが、実際にはもっと多いでしょう。その一つのデータはEconomistの推定で、世界の超過死亡(赤い線)は700万~1300万人で、中央値は約1000万人と推定しています。これは公式統計(グレーの部分)の約3倍です。
Q3. コロナ被害が多いのはどこですか?
ニュースによく出てくるのは欧米の国ですが、こういう先進国では超過死亡の推定とコロナ死者数の公式統計にあまり大きな差がありません。しかし途上国では統計が不十分なので、超過死亡と公式統計の差が大きい。
アジアでは実際の死者が公式統計のほぼ6倍で、インドでは、すでにコロナで100万人が死んだと推定されます。「ファクターX」と呼ばれるアジアの死亡率の低さは、公式統計で確認されていないコロナ死者が多いことも一つの原因でしょう。
Q4. 先進国ではどうなんですか?
Health Foundationの調べでは、過去5年の平均と比べたG7諸国の超過死亡率は、アメリカが25%と最高で、イギリス、イタリア、フランスなどがそれに続きます。日本の被害は最小で、過去5年平均と比べると4.1%増ですが、死亡数の増えるトレンドに比べると、1.4%減の過少死亡になりました。
Q5. 過少死亡というのはどういう意味ですか?
平年より死者が少なかったという意味です。次の図は東京都の週ごとの死亡数で、今年になって+(超過死亡)が出た以外は、ほとんど上限値(緑の線)の中に収まり、去年は平年値(点線)の中です。これはいいことですが、死者を平年なみに抑えることが感染症対策の目標だとすると、過少死亡は過剰対策だったことを意味します。
東京都の超過死亡(国立感染症研究所)
Q6. 日本の超過死亡がマイナスになったのはなぜですか?
他の国では感染症対策をしてもコロナ死者が大幅に増えたのですが、日本では肺炎やインフルエンザなど呼吸器の病気の死者が約2万人減り、それ以外の感染症も行動制限で減りました。それに対して去年のコロナ死者は約3000人だったので、合計約3万人の過少死亡が出たのです。
Q7. 他方で自殺が増えていますね?
日本の研究では、去年の自殺者は平年より1599人多かったという結論が出ています。特に女性が男性の1.5倍です。これは緊急事態宣言などで職を失った飲食業の従業員に女性が多いためと思われます。
Q8. 超過死亡の数字はどう考えればいいんでしょうか?
よくいえば、日本のコロナ対策は大成功だったといえるでしょう。G7の中で唯一、過少死亡になったことを菅首相がG7でアピールし、「他の国も日本に見習え」といってもよかった。他方で100兆円以上の対策費で3万人の命を救ったとしても、一人あたり30億円のコストをかけたのは、過剰対策だったといえるでしょう。
Q9. なぜ政府は、この世界に誇るべき数字を発表しないんでしょうか?
今までの対策が過剰だったことがわかると、厚労省の責任が問われるからでしょう。マスコミも、今までの報道が過剰反応だったことがわかるので、超過死亡は報じません。日本は先進国ではトップの実績を上げたのですから、その経験を他の国と共有することは大事なのですが。
Q10. 政府の対策は今後どうすればいいんでしょうか?
超過死亡でみると、日本のコロナ被害は世界で圧倒的に少なく、花火を上げているニューヨークと同じ状況です。緊急事態宣言やマンボウなどの無駄な行動制限をやめてビジネスを平常にもどし、インフルエンザのような普通の感染症としてコロナとつきあう態勢に変えるべきだと思います。