ワクチン接種はデルタ株にも有効である理由 --- 山本 和生

ウイルス学の簡単な説明です。ウイルスの感染というのは、宿主の体表面または生体内に付着している状態を指します。コロナ感染で有名になったPCRとは、このようなウイルスを綿棒でこすり取り、PCR機器で調べ、ウイルスRNAが存在すれば感染したと言うことになります。生体に付着したウイルスが細胞内に入ると増殖し、それに伴い自他覚症状が出現した状態を感染症と言います。

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この経過の中で、それではコロナワクチン(抗体)は、どこに効果あるのかというと、感染したウイルスと抗原−抗体反応して無害化します。またワクチンのシステムは、コロナウイルス感染細胞に働きかけ、感染細胞を排除します。つまり、ワクチンは、感染したコロナウイルスをいくつかの仕組みで殺すことで、ウイルスの増殖を抑え、結果として感染症の悪化を防ぎます。

それでは、ウイルス抗体は、コロナの感染を阻止するのでしょうか?いくら能力の高いワクチンであったとしても、空中に存在するウイルスを無害化することは不可能です。体表面に付着したり、内部に入ってきた感染ウイルスにのみ反応できます。「ワクチンはウイルス感染を阻止するのか」という問が、あちこちで発せられていますが、ワクチンにはそのような能力はありません。あくまでも増殖を抑制するだけです。感染は阻止しません。

イギリスで、ワクチン接種者にもデルタ株の感染が見られています。これは、ワクチンの無効を示唆すると考える識者もいるようです。私は、次の2つの理由で、ワクチンはデルタ株にも大変有効であると考えています。

  1. Public Health Englandの報告によると、ワクチン2回接種者の10人中9人は入院の必要の無い軽傷者であったようです。
  2. イギリスでは確かに感染者は増加していますが、死者数は増えていません。デルタ株による感染は増えていますが、ワクチンが重症化を防いでいる証拠です。

ワクチンの作用について上で説明いたしました。ウイルスが飛び交っている環境をイメージして下さい。ワクチン接種した人にも、接種の無い人にも、全く平等にウイルスは感染します。PCRはこのような感染ウイルスを見つけ出す方法です。感染後のシナリオに違いがあります。ワクチン接種者の95%以上は、ウイルス増殖がほとんど無いので、あたかも感染無しの日常となります。5%は、軽い感染症状(咳や鼻水程度)の後に軽快に至ります。例外的に抗体量の少ない人の場合は、重症になります。他方ワクチン接種の無い場合、従来通りであって、80%は無症状または軽症です。20%は中等度または重度の症状となり、1-2%が死に至ります。イギリスでワクチン接種者にもデルタ株感染者が出ているのは極めて合理的なことです。

山本和生(やまもと かずお)
東北大学大学院生命科学研究科、元教授
神戸大学医学部卒業。神戸大学、イェール大学での研究生活の後に、東北大学助教授、教授を歴任、2010年退職。専門は生命科学。突然変異の生成機構をPCR等を用いてDNAのレベルで研究。