Google+のTV広告にみるソーシャル化への意思-1

Googleが最新SNSであるGoogle+のテレビコマーシャルを米国で始めているようです。

僕は世界初のGoogle+(グーグルプラス)本の著者なんですが(笑)、Googleが自身のソーシャル化について、本気で取り組んでいることに対して「さすが」という思いでウォッチしています。

Google+は、Twitterのような非対称な人間関係(一方がフォローすれば相手の承認なしに、相手の公開情報を購読できる)をベースにしたSNSです。見かけこそFacebookに似ていますし、機能の豊富さはFacebookとのサービス開発競争の結果です。しかし、肝であるサークル(人間関係をタグ化もしくはリスト化する機能)はTwitterのフォローとリストをうまく取り入れたものです。つまり、Google+とはFacebookの皮をかぶったTwitterと言えるのです。

Google+のサークル機能は、第一に、人間関係が対象的ではなく非対称であるという事実に基づいて設計されています。両想いだけでなく、片想いであっても恋愛は恋愛である、といえば分かるでしょう。

第二に、人間関係とは、その関係性の距離感or密度に変化があるという事実を考慮しています。恋愛においても進展もしくは後退、結果としての結婚や別離があるようにです。(現在放映されているTV CMは、それをうまく表現しています)

Facebookとの差別要因を持つSNSを早期に作らなければならなかったGoogleは、この二つのコンセプトに基づいてGoogle+を作りました。同時に、作っただけではなく、Googleの全サービスを横断するようにサービスを発展しつつあり、すべてのサービスをソーシャル化しようとしています。

自動車の世界では、エコ化の波が市場からの強い要請となり、それに抗うメーカーは死滅せざるを得ません。そこで、トヨタを中心とするHV(ハイブリッド)と、欧州メーカーを中心とした新型ディーゼルエンジン、そしてテスラのような新興メーカーらを筆頭にEV(100% 電気自動車)などの選択肢が生まれています。日本特有の軽自動車でも、ダイハツがミライースの強烈なコストパフォーマンスで気を吐いています。とにかくエコ化(燃費を良くしてCO2発生も減らす)こそが最大の経営課題になっているわけです。

同じように、インターネット企業において、ソーシャル化は自動車業界のエコ化に匹敵する経営課題になっています。燃費の良さを訴える自動車はこれまでにもありましたが、エコ化への消費者の要求レベルは従前のそれとは比較にならず、上述のような革新性・新奇性をもったパッケージが必要になっています。同じように、ネット企業においても「いいね!ボタン」「RTボタン」などをサイトにおいただけではユーザーからはソーシャル化されたとは思ってもらえません。GoogleがGoogle+を作りTV広告まで用意して消費者にアピールするのは、ソーシャル化への本気の取り組みを市場に見せるためです。

つまり、ソーシャル化への取り組みが中途半端なことは、経営リスクになりかねません。ECはソーシャルコマース化しなければならないし、リアル店舗を持つ企業はO2O(オンライントゥーオフライン。ソーシャルメディアでアテンションを引いて、実際に店舗に足を運んでもらうこと)に必死で取り組まなければなりません。ニュースサイトやポータルであっても、現在あるトラフィック(PV)をソーシャルメディア上に還流させていく新しい施策を考えなければ、やがて恐竜のように勢力を失っていきます。

(続く)

小川浩 @ogawakazuhiro