昨日のFTが、露ロスネフチのCFOが「10ドルでもbreak-evenに持っていける」と語ったことをベースに、 “Rosneft shrugs off prospect of $10 oil”というニュースを報じている(Mar/31/2016、5:58pm)。一見、ロスネフチが「競争力」を誇示しているようにもみえるが、記事を読んでみると「やっぱり」という感を強くする。
弊ブログ「155.主要産油国が『生産凍結』を協議する理由?」(3月17日)で指摘したように、ロシアはもはや余剰生産能力がないので、サウジに「生産凍結」を呼びかけたのでは、と思わせる内容なのだ。
ロスネフチは、BPが19.75%の株主だが、ロシア最大の国営石油会社だ。
2015年第4四半期は、前四半期対比55.6%減少したが8億ドルの純益だった。2015年通年では、前年比34.4%減の61億ドルの純益。このように前年比でスーパーメジャー各社より好調な決算を維持できたのは、ルーブル安と税制の効果によるものだ。
この記事の中で興味深いのは、ロスネフチは主力である西シベリア油田の生産水準を維持するために2015年も相当の投資を余儀なくされ、掘削活動(drilling activity)を30%増やしたが、生産量は1%減の410万B/Dだった、今年もさらに掘削活動を30%増やし、前年比35.9%増の2,500本を仕上げる(complete)する計画だ、という点にある。
つまり「生産を維持する」ために2016年も掘削活動を30%増やし、前年比35.9%増の2,500本の坑井を仕上げるというのだ。
ロスネフチがロシア全体の原油生産に占める約4割に過ぎないが、基本的な傾向を代表していると思われるので、やはりロシアはもはや低コストでの余剰生産能力はなく、何とかして価格を上げる策を講じたいのだろう。
さらにこの記事は、ロスネフチが2015年、債務を47%減少させ12月末現在で232億ドルになった、だがこれは、融資買油(買主が一括前払いし、原油で融資返済を受ける方式。日本もかつてペルーを相手に行ったことあり)を増やし、銀行からの債務を簿外の債務に移しただけ、2015年9月末の融資買油の残高は434億ドルで、大きいのは中国のCNPCが相手だった、昨年1年間だけで原油で返済した金額は28億ドルだった、と報じている。
年間28億ドルというのは、おおざっぱにいって30ドルで1万B/Dだと年間1億ドルに相当するから、2015年には20万B/Dくらいが返済対象だったと推測される。
つまりこの記事の要点は、ロシアは、原油で債務を支払う「融資買油」の義務を果たすためにも増産が必要だったのだが、もはや限界に来ている、「生産凍結」でOPECと合意し、価格上昇を図りたい、というところにあるのではなかろうか。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年4月1日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。