白金硫酸事件で考える、恨みを買わない3つの自己防衛

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

硫酸事件は世の中に2つの衝撃を与えた。1つはアシッドアタックと呼ばれる苛烈な攻撃が、日本国内で起きたこと。そしてもう1つは犯行動機である。現時点では犯行の動機について「大学時代にタメ口を使われた」などと犯人が供述している。当初は「アシッドアタックを受けるなら意中の女性を奪われた、くらいの大きな恨みを買ったのでは?」といった予想が出ていた。そのため、SNSでは「そんなつまらない動機で恨みを買ったのか!?」といった驚きの反応が見られた。

atarzynaBialasiewicz/iStock

人の恨みは恐ろしい。他人から見ると小さいことでも、何が相手の心の火に油を注ぐかわからない。できるだけ買わないで済むに越したことはないのだ。本稿では筆者が意識して取り組んでいる「相手から恨みを買わない3つの行動」を紹介したい。

1.人生や人格の否定をしない

これは恨みを買わないための自己防衛、というより人としてそのような行動は慎みたいところである。その行動とは「相手の人生や人格を否定しない」というものだ。

人はそれぞれ、自分の信条や目標を持って生きている。他人がそれを表面上だけ理解した気になって、気軽に否定する行為はあってはならないと思っている。「自分は勝ち組で、社畜は負け組」のような稚拙な煽りがよく見られる。つい先日、有名インフルエンサーが人命軽視と取られる発言をして炎上したが、どんな時でもその人の生き方や人格、結果を否定することは相手の恨みを買う恐ろしいリスクがある。

「お金持ちを貧乏にしても、貧乏人はお金持ちにならない」とはマーガレット・サッチャーの言葉であり、「故に現況が好ましくない状況であっても、自助努力で高みを目指そう」と解釈するのが健全だと言える。しかし、世の中にはそう考えない人もいる。「自分はさておき、とにかく気に入らないこいつを引きずり下ろしてやる」といった破壊的な恨みの動機を持たれしまっては恐ろしい。自己防衛のためにも、相手を否定する発言をしないように気をつけるべきだ。

 

2.非道徳的、反社会的行動を取らない

明確に誰かに迷惑をかけてしまうような、非道徳的、反社会的行動を取ると恨みを買いやすいと感じる。

店舗への迷惑行為や、誰かをいじめるといった行為がこれにあたる。こうした行動がネット上で可視化すると、「特定班」と呼ばれる人たちによる、通報や人物特定に動くことがある。よくあるケースが迷惑行為を働くものがSNSで反論などをしてしまい、火に油を注いでしまうという光景だ。「こいつを社会的に破滅させてやれ」と徹底的に追い込むケースもあり、恨みの恐ろしさを実感する。そもそも、非道徳的な行動を取るべきでないのは、人の生きる道として言うまでもない。だが、「この人物は社会の反乱分子だ」といった認定を不特定多数から受けないことが肝要なのだ。

3.合わない人と無理に距離を詰めない

世の中はかつてないほど、多様性に満ちている。考え方や価値観はまさしく、人の数だけ違っていると言っていいだろう。そんな世の中に自分とは明確に合わないタイプの人間が存在する。それはどちらが正しい、誤りといった次元で語られるものではなく、もっとシンプルに「好き、嫌い」といった感情的な性質のものだ。一昔前に大ヒットした養老孟司氏の「バカの壁」が示してくれたように、「話せば分かる」は大ウソなのである。

筆者は相手から余計な恨みを買わないためにも、合わない人とは意識的に距離を取るべきだと思っている。なぜなら合わない人と無理に距離を詰めようとすると、意図せず相手の恨みを買ってしまいかねないからだ。筆者は会社員時代、ランチタイムは独学をしていた。だが、一人の同僚から「そんな身勝手な行動はよくない!会社内で親睦を深めるため、職場の同僚や上司と一緒に食事をとって盛り上がる話題を提供するべきだ」と強く抗議されたことがあった。相手から筆者を見ると、反乱分子のように映ったことだろう。このような場合は、どちらかが行動や価値観を相手に合わせる必要性が生じる。人によってはこうした圧力をかけられた相手に、恨みを覚える可能性はある。

世の中には、自分が想像もしないような価値観を持った人間がいる。思わぬ恨みを買わないために、意識して口や行動が滑らぬよう気をつけたいものである。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。