12月9日に開催された電波監理審議会で、3.9世代移動通信システム(900MHz)帯の比較審査基準等が、ほぼ総務省原案の通りに決定された。この結果、提言型政策仕分けが要求したオークション制度導入は完全に無視された。900MHz帯では、3.9世代を商用化するために、今までその周波数を利用していたMCAが他の周波数に移転するが、移転費用は3.9世代事業者から支払われる。この移転スキームについて、総務省が公表した意見募集の結果には、MCA工事業者の甘えがあふれている。
電波部の知り合いから、「一年以上かけて移行スキームについてやっと関係者の合意を得た。オークション派はきれいごとすぎる。」との言われたことがある。しかし、MCA工事業者の意見を読むと、電波部と無線業者の間にもたれ合いの構造ができていたこと、だから合意形成に時間がかかり大きな政策転換ができないことがよく分かる。
山田肇 - 東洋大学経済学部
以下、工事業者の意見を抜粋して掲載する。
工事業者の経営を支援してほしいという意見
松電産業株式会社:販売店(業者)は、昨今の経済状況及び、無線業界の縮小により疲弊しております。今回の移行作業によって、治具、ソフトウェア、代替用機器等々の準備も必要なため、費用については、原則前払いとして頂き、移行完了時に精算を行うことで救済されるものと考えます。
エクサ通信株式会社:一時的(短期的)に工事件数が増えることが予想されるため、測定機器や工事冶具等を販売店が購入したり、人員確保したりするための経費も、移行費用として考慮して欲しい。販売店が故障対応用に保有している代替機も新周波数に対応するため、移行費用として計上して欲しい。
三電計装株式会社:運送業やタクシー業は特に平日は業務に携わっており、無線機を移行する作業がどうしても休日や深夜となって長期間かかってしまう可能性があります。よって、それらの業種に対する移行費用については休日手当などの追加処置をご検討ください。
MCAのエリア整備を進めてほしいという意見
シンワ無線機販売株式会社:現在、広島市安佐北区にタクシー事業所で営業を営んでいますが、周波数が高くなると絶対届かなくなります、タクシーは無線配車が絶対必要ですが使用できなくなる事に対しての補償を求められる可能性が大ですがその場合、どのように対処して頂けるのでしょうか。
東菱電子株式会社:既存のMCAユーザーが、周波数移行にあたって現在と同等のサービスが受けられるのは当然とし、さらに利便性の向上につながるようインフラ整備の徹底をお願いします。具体的には、通信可能エリア、通話品質、無線機と連動して動作するGPSによる位置情報把握システム等が、移行によってその利便性が損なわれることのないよう、強くお願い申し上げます。また、新周波数への移行によって、新規ユーザーの獲得につながるメリットが得られるサービスの提供を期待いたします。
顧客名簿を奪われたくないという意見
有限会社九州無線サービス:認定開設者が利用者に直接関われば公平、中立が保たれずにMCA無線の切り崩しにつながるのは目に見えている。実務作業は免許申請代理人等の無線業者が関わるべきであり、費用については、移行後の保守メンテナンス等も考慮すべきである。
株式会社シーエスシー:規定上は当事者である認定開設者とお客様が直接やり取りするように読み取れますが、お客様に突然認定開設者から案内が行ってもお客様は理解できないばかりか、我々ディーラーに「直ぐに使えなくなるようなシステムを売りつけられた」と誤解を生むことにもなりかねません。また、顧客名簿が認定開設者に流れることで、MCA新システムへの移行ではなく、別のシステムへの移行が進められる懸念があり、断じて容認することは出来ません。スムーズな移行を実現するために、MCAメーカーが作っているエスシーアクセスサポート社などの第3 者機関を窓口にしていただきたいと思います。
そして最後に、総務省に貢献してきたのだから甘えて当然という意見
株式会社札幌通信システム:アナログ、デジタルの運用に関わらず、既存利用者の負担は「ゼロ」であるべきです。何故なら、歴史上初めての課金される電波としてMCAの運用が開始され、以後20数年間に亘り、継続されました事実は総務省事業への参画であり、貢献以外の何者でもないと感じるからです。区別なく「ゼロ」の取扱いを強く希望致します。今後の移動無線センターの事業拡大の一助であると思います。
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