「台湾有事」に極めて有効な米国の台湾への核持ち込みとは

緊迫する台湾情勢

最近、台湾をめぐる情勢が緊迫化している。台湾海峡では10月1日から4日にかけて中国軍機149機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入し、台湾を軍事的に威嚇した。また、中国軍は台湾上陸作戦の演習を公開した。米国のインド太平洋軍司令官は中国による台湾侵攻を「6年以内」と明言している。

これは、中台及び米中の主として通常戦力における中国優位への軍事バランスの変化を念頭に置いた警告であろう。台湾政府も危機感を持ち、台湾国防部長は、10月6日「中国人民解放軍は2025年までに本格的な台湾侵攻の能力を持つ」と警告した。

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「台湾有事」の危険性

このように、「台湾有事」すなわち、中国による台湾武力侵攻の危険性が、昨今、国内外で盛んに指摘されている。わが国においても、主として保守系の論壇で「台湾有事は日本有事」として、日米同盟の強化を含め、防衛力・抑止力の強化の必要性が強調されている。

「台湾有事」の危険性が否定できないのは、何よりも、国民にナショナリズムを鼓舞し、「中華民族の偉大な復興」を党及び国家の最高方針とする中国の習近平政権が、「台湾武力解放」の方針を放棄しないからである。習近平氏は、2019年1月2日、将来の台湾統一に向けた方針について演説し、「武力の行使を放棄しない」と明言した。

習近平政権が、台湾を核心的利益とみなし、「台湾武力統一」及び南シナ海、東シナ海、西太平洋への覇権主義的な海洋進出をもくろみ、核兵器を含む軍事力を急速に拡大増強していることは周知のとおりである。

日米連携による「台湾有事」の抑止

このような、台湾への武力解放方針を放棄しない習近平政権に対し、日米は連携を強化した。すなわち、2021年5月12日の菅前首相とバイデン大統領との「日米共同声明」において、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。これは、「台湾有事」を想定し、日米が連携してこれを抑止する趣旨のものである。

共産党一党独裁の専制国家である中国が、自由民主主義に立脚する台湾を武力で侵攻する事態は、同じ自由民主主義国家の日本として容認できないであろう。

しかし、世界第2位の巨大な経済力に基づき、年々、核兵器を含む軍事力の飛躍的拡大増強をやめない中国に対する、上記の米国インド太平洋軍司令官の警告や、台湾国防部長の警告からして、遠くない将来における、中台及び米中の主として通常戦力における中国優位への軍事バランスの変化を考えれば、通常戦力のみによる「台湾有事」すなわち、中国による台湾武力侵攻の抑止には限界があると言えよう。

「台湾有事」に極めて有効な米国の台湾への核持ち込み

したがって、「台湾有事」を完全に抑止するためには、米国による台湾への「核持ち込み」が最善の方法であると筆者は考える。「核持ち込み」によって核兵器が存在する台湾への中国人民解放軍による武力侵攻は、核兵器による反撃を受ける恐れがあり、「中台核戦争」及び「米中核戦争」の危険性が生じるからである。

このような事態を想定すれば、中国による台湾武力侵攻は不可能となるであろう。なぜなら、台湾武力侵攻は、核戦力において圧倒的に優位な米国との間の「米中全面核戦争」を誘発しかねず、中国習近平指導部の消滅のみならず、中国共産党政権の消滅、中国国民及び中国本土の壊滅的破壊消滅の危険性を排除できないからである。「中華民族の偉大な復興」の夢も永遠に消え失せるであろう。

したがって、米国による台湾への核兵器持ち込みは、「台湾有事」すなわち、中国による台湾武力侵攻の抑止に極めて有効であると言えよう。