黒坂岳央(くろさか たけを)です。
外務省の発表した「対日世論調査」の結果を取り上げたメディア記事が話題を呼んでいる。アメリカが考える重要な国は1位・カナダ、2位・イギリス、そして3位が日本だという。
調査の詳細としては1,013名の一般的なアメリカ人と、200名の有識者(学術・政界などの指導者)に分けて行われたものだ。「アメリカ人は日本をどう見ているのか?」を論じる上での大局的視点の獲得に活用できる有意義なデータだろう。
この調査結果にSNSでは様々な反応が見られ、中にはかなりネガティブなものもあった。しかし、筆者はこの結果はポジティブに捉えたいと思っている。何かと批判されがちな日本の政界の人たちの功労の結果と考えたい。
調査の概況
まずは調査の概況を見ていこう。
日米関係を「極めて良好」「良好」は一般の部で74%、有識者の部で98%となっている。昨年度はそれぞれ、63%、67%だったので大幅改善した格好となった。対日信頼度「日本は信頼できる友邦である」は一般の部が70%、有識者の部が96%である。SNS上では「アメリカ人からすれば、日本など中国との見分けがつかないだろう。中国の国の一部など思い違いをしているアメリカ人も多い」などの反応も見られるが、サンプリング上ではアメリカは日本を明確に中国とは別の国と認識しており、概ね肯定的に見ているという結果ということが分かる。
また、アジア地域で「アメリカの最も信頼できるパートナー」を有識者に問う設問で、36%(昨年度48%)が日本と回答、日本が各国の中で最上位となっている。日米安全保障条約は、「維持すべき」という回答が一般の部で70%(昨年度73%)、有識者の部で88%(昨年度93%)である。次は東アジアの平和と安全に「非常に貢献している」「ある程度貢献している」の回答(有識者の部)は85%(昨年度88%)だ。日米安全保障条約は米国自身の安全保障は「極めて重要である」「ある程度重要である」の割合も94%(昨年度92%)となった。昨今、中国の軍事的、ビジネス的な脅威が広がる中で、アメリカにとって日本は重要なパートナーという見方だ。特に有識者の間で顕著に数値が高い。
最後に日米の経済関係で、日本はアメリカ経済に「良い影響を与えている」との回答は、一般の部で約50~60%(貿易63%、投資59%、雇用創出48%)となった。有識者からの回答で、米国経済に最も貢献しているのはどの国か?については、日本はいずれも上位5か国(貿易4位、投資2位、雇用創出3位)に挙げられている。
総評すると、日米関係について言えば、我が国の外交は成功していると言っていいだろう。
ネガティブな反応への反論
オンライン上では、この結果を素直に喜べない声も見られた。「かつて(2017-2019年)は1位だった時期もあったのに」「アメリカは日本を中国の防波堤のように認識しているだけ」「日本は実質的にはアメリカの属国でしかない」といったものだ。
「アメリカのいいように使われているだけ」という批判も見られるが、日本はそれで恩恵を受けていると考えることができないだろうか。「日本はアメリカから大量に買い物をさせられている」という意見は、それだけ魅力的な商品・サービスがアメリカにはあるということもできるし、実際に日本人はそれで得をしているのである。我々はGoogleやYouTube、iPhoneやFacebookだけでなく、31アイスクリームに、マクドナルドをアメリカ発の商品サービスを楽しんでいる。大半の日本人にとっては、これらがなかった時代に戻りたくないだろう。
また、国防についていえば「アメリカは日本を盾にしている」という意見は逆だと感じる。アメリカの脅威となっている中国とロシア、太平洋の制海圏、制空圏を考慮するなら、確かに日本は最重要の位置にある。だが、日本にとっては、アメリカも盾になっているということだ。日本に米軍基地があり、「今も実質的には支配されている」などと指摘はあるが、もしも米軍基地が日本になかったら?を想像してみるべきではないだろうか。おそらく、今より日本の国防が脅かされる可能性は高くなるのでは?と感じてしまう。
「日本の外務省が行った調査など恣意性を排除できない」という意見もあったが、ソース元を見るとアメリカのハリス社の協力を得ている結果である点を考慮すべきだろう。また、この調査結果は外務省が行ったものである。故にアメリカ人の対日感情を正確に理解することは、外交にも影響する重要な指標だ。そんな重要な指標に「日本はすごい!」と連呼するTV番組のような恣意性を取り入れ、自己満足に浸るメリットはデメリットを上回るとは考えられない。
◇
結論的に日本にとってもアメリカにとっても、お互いの国は重要なパートナーという認識であることは間違いないことがわかる、喜ぶべき結果だと思う。逆に日本政府が外交をしくじったことで、アメリカからの信用がなくなっていたというなら、それは悔やむべきことであろう。
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