すでに共産主義ではない中国共産党
「巨大中国を動かす紅い方程式 モンスター化する9000万人党組織の世界戦略」は、そもそも中国共産党ってナニというところから解説していますが、中国の現況も以下のようなとてもわかりやすい言葉で書かれています。
中国版世襲政治家系「紅二代」の習近平が、永年国家主席として爆誕しました。その際、建国100周年の2049年にアメリカ抜く目標たてて、超大国パワーアピールのプロパガンダに突入しました。「一帯一路」を宣言してゴリゴリ世界覇権拡大してるけど、技術ベースで急成長する中国を脅威に感じた米国からふっかけられた米中貿易戦争で米中対立激化。数年間はトランプ社長とポンペオ長官からのタコ殴り世論戦でしたが、耐えまして、バイデン新政権になってみたいな
状態…だそうです。つまり中国共産党というものは
まるで一貫したイデオロギーゴリゴリの「○○主義」のような組織方針なんてものはなくて、前世紀末までは生き残ることに必死だっただけの組織体のように映ります。
と、そもそも生き残ること自体が自己目的化しているのは、日本の政党と似ているかもしれません。しかし、国民の権利が抑制された上での繁栄ですので、中国の国民として生きていくのはとても大変なようです。
けれども、一方で、我々が対峙する相手としてのチャイナは、これだけの「優秀な人材によって統治されているし、外交においては我が国の政治家や官僚がこうした人材とガチンコ勝負していくということにほかならないわけです。我々が彼らの人材育成システムを理解することは、彼らと競争していくために必要な知識といえるでしょう。
という冷静な分析をわれわれ日本国民に勧めます。中国恐るべし、です。
我が国の政党による国政選挙候補者公認の密室性や、小選挙区比例代表並立制の弊害が叫ばれても何十年と改革が頓挫している我々の現況を振り返りながら、一方でチャイナが国家を牽引する人材育成について改革を止めず、この数年でも着実にアップグレードしているシステムであるということは注目しておくべきことでしょう。
中国の統治機構と強権アナーキー混合経済
中国の経営方針は「中共ホールディングス(党)」と、国家と軍という2つの独立事業会社があるとみるとすっきりしてくると言います。国家資本主義と言われますが、この構図のもとでビジネスが行われているので、曲がりなりにも資本主義や自由主義に慣れ親しんだ日本人には奇異に見えてくるようです。
チャイナのベンチャー企業が新しい事業を起こそうとしたときに、まずは法律グレーでもとりあえずやってみるというノリで、党上層部自体が「黙認」することで「セカンドムーバーアドバンテージ」を最大限に活用しようという時代が長く続いたようです。
そして、成功した企業がじゅうぶん大きくなった段階で、
「そもそも論として法律でNGだよねぇ、そんな違法なことがまかり通ると思ってんの?え?ねちねち…」的な論拠を正々堂々と上から目線で言い放って、業界を取り締まって、中小企業の戦いを勝ち抜いてきたユニコーン企業やIPO間近の大手の何社かを政治的に屈服させます(党の指導に従わないと事業停止処分ね、と)。紅い鉄槌の登場です。
となるようです。
ようするに、入り口はグレーで広くとっていますが、出口でしっかり締め上げるというスタイルなので、よくもわるくも(模倣も含め)イノベーションが起きやすいということです。行政がなんでもかんでも禁止してしまう日本とはえらいちがいですね。どちらの国が社会主義なのでしょうか。
これからの中国はどうなる?
中川氏は、現時点では、軍事・経済・マネー・文化・エンタメ・言語・学術などあらゆる分野で米国が優位だと分析しています。けれども、ここでも中国は戦略的に立ち回って、覇権の座を虎視眈々と狙っています。
これを2030年代までに総合力として対等なレベルまで持っていき、2040年代後半までにチャイナが多くの領域で米国を凌駕した上で、初めて米国と戦う意思を見せるはずです。ですから、チャイナはいま全面的に米国と戦うことはせず、「闘いません、勝つまでは」を堅持しています。
このような平易な言葉で、共産党や中国人の思考の癖、独自の経済制度が分析・紹介されており、目から鱗が何枚も落ちる注目の著作です。
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