日本が生き残るためのイノベーションの土台となるものとは --- 中島 渉

日本の現在地点

日本は2020年、菅政権の際に2030年までに2013年と比較して二酸化炭素排出量を46パーセント削減することを表明した。それに加えて2050年までには二酸化炭素放出量と、排出量と吸収量、除去量の合計をゼロにするカーボンニュートラルを達成するとまで発表した。

Rawpixel/iStock

気候変動対応において必要な施策は、再生可能エネルギー、二酸化炭素を回収し埋没させるCCUSというシステム、火力発電でアンモニアを燃料とする技術など実に多く、アプローチも官民一体で行うことや、企業独自の戦略のみで行うなど達成に及ぶための手段は多岐にわたる。

日本に潜む課題

しかし、先ほど挙げた、どの分野でも国際競争において、日本は開発には着手しているが、生産では現代会では利益化に至っていない。

例えば、2019年の風力発電シェアではデンマーク、スペイン、中国、フランスが約7割を占めている。これに加えて、シリコンを主原料とする太陽光発パネルは生産の7割を中国が担っている。

このように日本は脱炭素の解決において国際競争で引けを取っている印象がある。開発に着手している分野が多いことから、市民にとっては一見日本は進んでいるような印象を抱きやすいが、現実では市場の土俵に登りきれていないように思える。

今後求められるポイント

日本が今後、カーボンニュートラルの目標、気候変動対応、国際競争の3分野における主導権を取得するには、技術を昇華し、実現、そして利益化に至るためのイノベーションが求められるだろう。風力発電や、太陽光発電など既存のプラットフォームでは海外諸国が低コストかつ安定して生産するという基盤ができている。その部門であえて勝負することは不利に思える。

上記で述べたイノベーションの生まれどころは多様性にある。異なる分野のアイディアを交え、一つの実現可能な解に収斂化する過程に異なる国籍、バックグラウンド、年齢の人材と協働しあうことこそ重要である。では、そのような環境をはどのように作られるのか。

それは中等教育機関である。ある程度成熟し、初等教育とは異なる環境でコミュニティを形成する学生時代こそ絶好な環境である。異なる意見や新たな環境を受け入れ、尊重することで新しいことへの免疫を付ける。そして自らが考えを発信しやすい中等教育環境を作ることも気候変動問題を間接的に解決に近づける手段であることも念頭におきたい。

中島渉(なかじま わたる) 国際教養大学1年
広島県出身。秋田にある公立大学に、気候変動対応を多角的に分析するため入学。海外留学を視野に入れ、多岐にわたる学問を水平的に勉強中。課外では学祭委員会、サイクリング等、自分の軸を発見すべく日々挑戦中。