海外への出入国に関する記事はたびたびアゴラに掲載して頂いたが、今回は日本人がEUに行く時の話を書きたい。以下の記事のEUに関わる部分の続きの話になる。
ちなみにEUの国境開放方針は、おおかた私が5月に上記記事で書いた予想どおりに進んでいる。現在ワクチン接種の有無に関わらず、低感染国からの入国を認めている国は多い。
EUは感染度の低い国のリスト(グリーンリスト)を発表しており、加盟国に対してグリーンリスト掲載国からの旅行者は受け入れるように推奨している。リストは世界各国の感染状況に応じて2週間ごとに見直され、実際にこのリストを受け入れるかどうかは加盟各国の判断による。
日本は感染が拡大した時期はグリーンリストから外され、落ち着いたら戻るという経緯を繰り返してきた。今はいわゆる第5派の感染拡大により外されていたので、そろそろリストに復帰できるはずだと、私はEUの発表をずっと気にしていた。
以下のHPでは10月8日付のリストが掲載されていた。私は10月8日に日本のリスト復帰を期待していたが、まだ復帰できなかった。そこから14日後の22日には復帰するだろうと、何度もアクセスしたのだが、なかなかHPが更新されずに、どうなったのかと気になっていた。
すると1週間経った10月28日付けで改訂されたというニュースが出た。
この改訂で追加されるのはアルゼンチン・コロンビア・ナミビア・ペルーで、日本はまたしても入らなかったのだ。
私が不可解なのは、このリストは2週間ごとに見直されるはずなのに、何故か今回は3週間を経ての改訂になったことだ。日本を入れるかどうかで政治的な動きがあってもおかしくない状況に見える。ちなみに最近感染が急拡大しているシンガポールは今回除外されていない。
日本の感染度が世界的に見て高いということはない。またEUのリストはあくまで加盟国に推奨するだけのものであって、実際の決定は各加盟国が独自に行っている。
例えばフランスは日本をずっとグリーンリストに入れている。
France Adds Argentina to Its Green List, Removes Brunei & Singapore
このニュースはフランスのグリーンリストにアルゼンチンが加わってブルネイとシンガポールが外された、という見出しである。
記事の中身を読むと、10月26日現在のグリーンリスト掲載国が書かれており、その中に日本がちゃんと入っているのだ。
Thus, as of October 26, the list of green countries consists of the EU and Schengen Area countries, the European microstates as well as the following third countries: Australia, Argentina, Bahrein, Canada, Chile, Hong-Kong, Japan, Jordan, Kuwait, Lebanon, New Zealand, Qatar, Rwanda, Saudi Arabia, Senegal, South Korea, Taiwan, Union of Comoros, United Arab Emirates, Uruguay and Vanuatu.
またフィンランドの健康福祉局は10月16日付けの決定で、日本をワクチン接種もPCR検査もなく入国できる国に入れている。
Travel and the coronavirus pandemic
A COVID-19 certificate or a COVID-19 test shall not be required from 16 October onwards when, in the last 14 days prior to arrival in Finland, the passenger has resided only in Bhutan, Hong Kong, Indonesia, India, Japan, China, Kuwait, Macao, Saudi Arabia, Taiwan, New Zealand, or Vatican, or in the Norwegian municipality of Sør-Varanger, Karasjok, Storfjord, Nordreisa, or Tana. The countries listed in the Decree are referred to as countries with a low risk on this page.
ところがフィンランド国境警備隊による10月18日から11月7日までの入国制限では、日本は「無制限国」に復帰していないのである。
Guidelines for border traffic during pandemic as of 18 October 2021
In accordance with the decision of the Finnish Government, cross-broder traffic from certain countries and regions has been normalized. These include: Australia, Bahrain, Canada, Chile, Hong Kong, Jordania, Kuwait, Macau, New Zealand, Qatar, Rwanda, Saudi Arabia, Singapore, South Korea, Taiwan, Ukraine, United Arab Emirates and Uruguay.
ちなみにこのリストに挙げられている国は、EUのリスト掲載国に従っている。
10月29の日経新聞HPに以下の社説が掲載された。
主要7カ国(G7)のなかで米英独仏など日本を除く6カ国は、日本からの入国者について、ワクチン接種証明やPCR検査の陰性証明があれば入国後の隔離を免除する体制に移行した。
シンガポールのような厳しい検疫で知られる国も、相手国との相互主義のもとで隔離を求めない方針を打ち出している。
ところが日本政府は硬直的で、国籍や出発国を問わず入国者には原則14日間の自宅などでの待機を義務付けている。ワクチン接種証明を持ち、入国後10日目以降のPCR検査で陰性だった人は期間が短くなるが、14日がたかだか10日になるだけだ。この間、電車などの公共交通機関が利用できないなど不便を強いられる。
「相互主義」のもとで、EUが日本をグリーンリストに入れたくないと考えても不思議ではないのだ。
生活の正常化が進む北欧諸国では、自国が定めた低感染国からの入国者に対してはワクチン接種不要、PCR検査無し、入国後隔離なしでの入国を認めている。EUのグリーンリストに日本が掲載されれば、これらの国では日本からでもワクチン接種不要、入国前検査なし隔離なしの入国を認める可能性は高い。
私は昨年11月に北欧へ「観光旅行」に行ってきた。フィンランドとスウェーデンには何のチェックも受けずに入国できたが、デンマークは当時規制が厳しく、日本人観光客の入国は認められなかった。今後各国のグリーンリスト対象国が正式に改訂されれば、今年も去年入れなかったデンマーク、ノルウェーも含めて北欧旅行に行ってこようかと思っているが、なかなかEUのグリーンリストに日本が復帰しないので行動に移せないでいる。
ところで、何故ここに書いた話が日本では報道されないのかが私には不思議である。ワクチンを打たなくても海外旅行ができる国があるということを日本人に知られたらまずいと、日本のマスコミは考えているのだろうか。
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