高嶋哲夫 (著)「EV」。「テスラ」と「ボクラ」は2009年ワールドソーラーチャレンジで戦った。

野北 和宏

今回の書評は、高嶋哲夫 (著)「EVです。

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本書「EV」は、過去に「首都感染」で見事コロナ禍を予言した経歴の持ち主、高嶋哲夫氏の電気自動車(EV)に纏わる日本と米国、中国を中心とした産業・政治シミュレーション小説。物語で登場する「テスラ」はCEOの名前のみをウィリアム・デービットソンと変えているが、ほぼ全てイーロン・マスク氏そのもの。日本の自動車会社の社名も全て今存在する会社が容易に想像できる。

EVは、単に電気で動くことで注目されているのではなく、移動する蓄電池として、再生可能エネルギーの分散蓄電装置として機能する。そして、ライドシェアと自動運転で、従来の車の概念を根本的に覆すもので、これから近い将来全ての車がEVに置き換わることは確実であると思う。そこには、各国の産業と政治に関わる駆け引きが繰り広げられている。特に日本は自動車立国であるため、その産業構造が変わると大きな影響を受けることになる。

今日本が置かれている状況に危機感を持って「近い将来の日本の産業の在り方」を考える起爆剤として、全ての日本の方々に今すぐ読んでもらいたい内容。

ここから以下は、「テスラ」と「ボクラ」が2009年ワールドソーラーチャレンジで戦った時のことを懐古する。

2009年10月。オーストラリアを北のダーウィンから南のアデレードまで3000kmを縦断するソーラーカーレース、ワールドソーラーチャレンジの「エコチャレンジ部門」に参加した。

僕等は将来電気自動車(EV)の世界が来ると信じ、「ディーブグリーン」プロジェクトを立ち上げた。従来のガソリン車からEVへ急速に入れ替わる時、中古車を廃棄するのではなく、エンジンと燃料タンク以外のボディーを含めた車体を再利用する、いわゆる「コンバージョンカー」のデモンストレーションが目的。

そのエコチャレンジ部門には、創業まもない「テスラ」がロードスターを元にした初期のモデルで参戦していた。そこでは、「テスラ」と「ボクラ(僕等)」の一騎討ちが繰り広げられたのを12年経った今でも克明に記憶している。