クレーマーも外国人コンビニ店員に弱腰な3つの理由

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

弁護士ドットコムに、とても興味深い記事が取り上げられている。コンビニで日本人店員があえて外国人名の名札をつけたところ、明確にお客さんからのクレームが減少したのだという。同記事では「お客様は日本人店員だと、きめ細かい対応に期待してしまうのでは?」と分析している。

筆者はお店で怒りや不満をぶつけるようなクレームを付けた経験は一度もないが、この理由は分かると思っている。下記の通り分析したい。

TAGSTOCK1/iStock

クレームをいう年代は40代、50代

日本労働組合総連合会の消費者行動に関する実態調査によると、1000名を対象とした一般消費者の内「サービスや商品にクレームをいったことがある」と答えた人は全年代で4割で50代では51.5%というデータが出ている。もちろん、「クレームをいった」と回答した全員が、カスタマーハラスメント(以下カスハラ)に抵触するようなひどい対応をしたわけではないだろう。多くは紳士的に必要な抗議をしたものと考えたい。

このデータはクレームをいってくる年代を明らかにしてくれた。このデータの前提でクレーマーがコンビニ店員に弱腰な理由を論理展開をしていきたい。

1. 外国人におもてなしを期待していない

相手に激しくクレームを付けるような場合の多くは、自分の期待値が高すぎて相手がその期待に見合う対応ができていないケースがある。

コンビニ現場でのカスハラの想定ケースでは、たばこの注文を受ける際に、銘柄を言われてわからず番号でいってもらうようにお願いすると「そのくらいわかれ!」と激昂されたり、「お箸つけますか?」と尋ねると「見て分かるだろイチイチ聞くな!」と怒り出す。これは相手に「聞かなくても自分の要求をわかってほしい」という期待が裏切られたと感じているから起こるのだ。…もっとも、コンビニに一流ホテルのような1を聞いて10を察するエレガントな要求をしてしまっている時点で、来る場所を間違えているわけだが。

しかし、外国人相手にそこまでのきめ細かい対応を求める人は少ない。カスハラをするような人物も、自分は日本人にしかできない、おもてなしを要求していることを理解しているのだろう(実際には日本在住の外国人の中には、日本人顔負けのおもてなし対応ができる人はいるのだが…)。

2. 外国人からよく見られたい

普段は厳しい対応をするような人物でも、相手が外国人だと弱腰になるケースは少なくない。

YouTubeにアップされている動画の中では「外国人のふりをしてみた」というものがいくつがある。オラオラと怒鳴り散らすような詐欺の架空請求業者は、外国人のふりをした相手に「大丈夫ですか?こちらの日本語わかりますか?」といきなり猫なで声になる様子が視聴者の笑いを誘っている。

これに限らず、外国人に対して強く出ることができない日本人は少なくない。これは個人的推測の域を出ないが、「日本という国や日本人を相手からよく見られたい」という自意識が無意識にそうさせているのではないかと考えている。テレビ番組でも「日本は海外から称賛されている!」という趣旨のものを、クレームを付ける事が多い年代層は好んでみている傾向があることからも伺える。

この仮設が正しい場合、クレーマーは自分自身ではなく、日本という国家や日本人という属性に強烈なプライドとアイデンティティを持っており、かのような対応へとつながっているのだろうと考えられる。

3. 外国人が怖い

日本人の中には、外国人に対して潜在的な恐れを抱く人がいる。

たとえば訪日外国人が突然、自分に英語で話しかけて来た場合は「ここは日本だ!英語で話してくるとは失礼な!日本語話せ!」のような対応するような人はほぼ皆無であり、「Sorry…」「I can’t speak English」のように、笑顔を交えて英語ができなくても懸命に返そうとする人は少なくない。まるで「不勉強で英語を話せず、申し訳ない」とへりくだりすぎるように見えるケースすらある。

日本にいるコンビニの外国人店員は日本語を話す。それでも「クレームという想定外の対応をさせて、相手が急に英語を話してきたらどうしよう…」という不安が強い態度を抑制しているのではないだろうか。

また相手のひげが濃かったり、体格が良い男性店員だと、見た目に威圧感を覚える人もいるだろう。カスハラをするようなクレーマーは、自分より弱い相手を冷静に見定める観察眼がよく働く。いかつい見た目の相手にも、物怖じせずに堂々と抗議できるような強さは皆無である。

以上のことから、クレーマーは外国人店員に言うもどおり文句を付けないのだろうと推測できる。そもそも、外国人店員に過剰なおもてなしを期待していないために、腹の立つ期待値も生まれないのだろう。そう考えると、クレーマーを生み出すのは「お客様は神様」というおもてなしの精神と言えるのかもしれない。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。