アゴラ掲載の『「ドローン、大都市圏突!!」中野区において準備中』で予告させていただいた実証実験が1月17日に実施された。
その様子をメディアで取り上げていただいた。
東京都中野区など、「有線ドローン」飛行実験 日経新聞
建物調査へドローン活用 中野サンプラザで実験 安全飛行など確認 東京新聞
東京都中野区、国立研究開発法人建築研究所(茨城県つくば市)、一般社団法人日本建築ドローン協会及び一般社団法人日本UAS産業振興協議会は建物の外壁調査に使うドローンの飛行実験を行った。4者はドローンを活用した共同研究を実施するため、相互協力に関する覚書を2021年5月6日に締結した。
国は無人航空機の有人地帯における目視外飛行、いわゆるレベル4を目指している。
無人航空機はドローン、有人地帯は都市部を含む人口集中地区、目視外飛行はパイロットがドローンを目視せずに運転することを意味し、特に都市部の飛行には多くのハードルが存在する。
ドローン飛行のハードルとは、まずは国の許可もしくは法律が定める飛行であること、そして飛行ルート地上の土地所有者・管理者の許可を得ることである。それぞれの許可を得たとしても、都市部において自由にドローンを飛行すれば、警察通報案件となりかねず、地元住民のご理解も必要である。
そこで本研究グループは飛行目的を建物点検に限定し、飛行ルートは建物周りと制約することで飛行に対する地元住民のご理解を得ようとするものである。
その実現に向けて、課題ひとつひとつを解消するためにも地道な実験が必要であり、今回は2つの実証実験を行った。
実験1.中野サンプラザの外壁調査実験
都市でのドローンの実装に向け、超高層建築物の道路に面した外壁に対して安全を確保して点検ができるか検証。
〇 実験目的
道路に面した高層建物の外壁について、安全を前提にドローンを使用して点検ができるか検証する。
〇 実験方法
ドローンが外壁に衝突せず、フライアウェーもしない、かつ墜落範囲を特定して被害を最小限に抑えることが可能な2点係留装置を使用する。2点係留装置によりドローンを上下に飛行させながら撮影し、建物外壁のコンクリート面のひび割れ等劣化を点検・調査する。道路近傍で飛行するため、一部歩道を使用する。
〇 実験成果
道路に面した外壁点検の可否判断の明確化
〇 実験の様子(実証実験では図2の⑦のラインで飛行)
〇 結果概要
ラインにより、操縦だけでは困難である傾斜のある飛行を実現することができた。ラインがあることで安全性のみならず、飛行のサポート機能を有することも実証できた。
実験2.中野サンプラザと中野区役所間の建物間移動実験
飛行中のドローンがトラブル等の不調に陥った際に、比較的人の少ない屋上に着陸することを想定し、ドローンが中野サンプラザの屋上から離陸し、中野区役所の屋上へ着陸する実験を行う。
〇 実験目的
別建物屋上に緊急着陸ができるか検証する。
本実験はドローンの機体にトラブルが生じた時、着陸箇所として建物屋上を選定するなどの効果が期待できる。また都市における屋上を活用したドローンの離発着にも将来期待され、万が一の事故に対応するための飛行訓練にも応用展開可能である。
〇 実験方法
中野サンプラザの屋上からドローンを離陸(目視外)、道路を横断し、中野区役所の屋上に着陸(係留装置なし)
両建物の間にある道路は区道、中野サンプラザを運営する会社の株100%を中野区が所有しており、中野区役所含めて、すべて中野区の関係施設であるために許可は得やすかった。
〇 実験成果
緊急時に建物屋上を着陸指定する条件の明確化に寄与。
〇 実験の様子(素人の著者撮影のため、お見苦しく恐縮である。)
ドローン 中野サンプラザ‐中野区役所間の飛行実験1 サンプラザ屋上より(2022年1月17日)
ドローン 中野サンプラザ‐中野区役所間の飛行実験2 サンプラザ正面より(2022年1月17日)
〇 結果概要
中野区役所屋上から離陸も試みたが、周辺に磁気を狂わす障害物が多数あり、コンパスにエラー表示で離陸することができなかった。しかし中野サンプラザ屋上ではエラーはなく、離陸ができた。都市部におけるドローン飛行で離陸条件を満たすには課題があることが示された。
レベル4の飛行はできるようになったが、社会実装にはドローン本体の開発、パイロットの育成、ルール作りなどやることは山積しており、本研究グループがその一助となる研究を推進されることを期待する。