前編では区の今後10年の歳入見込みが甘く、今後10年間は毎年30億円少なく見積もるべきであると論じさせていただいた。
後編では歳出における問題点および全体を通しての総括をさせていただく。
(前回:中野区のずさんな財政計画(前編))
3. 中野区の歳出について
特別区交付金が令和5年度以降30億円程度多く見積もられ、中野区の実力を勘違いし、タガが外れた放漫経営的な歳出になっていると考える。
(1)令和4年度の歳出について
財政フレームの一般事業費は義務的経費を除いた経常経費であり、経常経費を削るというのは基本的に一般事業費を下げることになる。
令和4年度以降、経常経費が214億円を維持し続ける予算編成である。
令和2年度予算編成時における10年間の財政フレームでは向こう10年間、毎年150億円程度としており、2年間で64億円増額した。
表3は64億円経常経費が増加した理由であるが、主な理由として30億円程度しか計上できなかった。
致し方ない経常経費の増加もあるが、何が増額したか管理ができておらず、緊張感がなく経常経費が増加している証左である。
中野区はコロナによる財政悪化に備えて、構造改革実行プログラムを策定し、財政効果を生み出し、歳出抑制に努めているが、その効果を表4の構造改革実行プログラムに基づく取組の財政効果の内訳(令和4年度及び令和5年度)に示す。
財政効果として、①経費削減、②歳入確保、③人件費相当の3つの効果を謳っている。
経費削減は令和4年度7016万円、令和5年度2492万円で2年間の合計で1億円に満たない。
歳入確保は令和4年度3億1540万円、令和5年度0円である。
人件費相当というのはDX推進により、職員の作業効率の向上によって生まれた時間を金額換算したものである。
しかし作業効率が上がったとしても職員の人数削減、人件費カットするほどの効果はないため、歳出抑制につながらない。
構造改革実行プログラムが無駄とはいわないが、大きな予算削減につながらず、焼け石に水である。
表2に令和4年度に新規・拡充等事業という項目があるが、その内容を表5の「次年度予算で計上した新規・拡充事業に係る経常経費の見込み(一般財源ベース)」を示す。
令和4年度に始める新規・拡充事業すべてが令和5年度以降に経常経費になる。
後年度における単年度経常経費を示しているが、合計値は10億4559万円となっている。
つまり事業を続けていけば、毎年10億円以上の経常経費が必要となる。
中野区においては令和5年度より、児童相談所を開設するが、推進事業というカテゴリになっているために表4に示されておらず、令和5年度以降の児童相談所を含めた経常経費が8.1億程度になる。
新規・拡充事業にかかる経常経費10億4500万円程度、推進事業8.1億円を合わせると新規・拡充・推進事業を合わせた単年度経常経費は合計19億円程度になる。
しかし議会の審議において新規・拡充事業はこの表に明記されているものがあるとの答弁であった。
少なく見積もっても20億円程度の経常経費を見込む必要がある。
しかし表2を見ると令和5年度以降の一般事業費は214億円のままでこの20億円の経常経費が追加されている様子はない。
中野区は「新型コロナウイルス感染症の影響による経済状況の先行きが不透明であることから、中長期的な視点を持ちながら、経常経費の削減や歳入確保、将来に備えた基金への積み立てと起債発行の抑制にも取り組んだところである」としているが、中長期的な視点はわかる範囲でも反映されていない。
表6に表2を基として、再試算後の財政フレームを示す。
財産費を除く交付金は図5の緑のラインで示したものであり、無論、歳入合計額は減る。
一般事業費は経常経費であり、前述のとおり20億円程度が令和5年度以降に増額するべきであるが反映されていないために著者が再試算した。
これらの歳入減、歳出増をすべて基金積立金(区の貯金)に影響があると仮定し、反映した。
再試算前後を比較すると448億円程度、貯金ができなくなる可能性がある。
ここで中野区の財政計画のずさんさについて、まとめる。
- 歳入は年間30億円少なくなることを見込むべき
- 構造改革実行プログラムによる歳出の抑制は難しい
- 令和4年度から新規・拡充・推進事業が始まり、その事業は後年度に経常経費約20億円が増額させる
- 財政フレームに歳入・歳出の見込みの甘さを足し合わせると、令和5年以降に年間50億円程度の見込み差がある
- 上記が10年間の財政フレームに反映されないまま含まれないまま、令和4年度の予算編成がされた
中野区の小中学校一校を建て替えるのに52億円と試算されており、中野区の見込み差と同額である。
今後一年に一校小中学校を建て替える予定であり、その予算が貯められない。
中長期的な観点から比較的余裕がある令和4年度は、新規・拡充事業を始めるのではなく、基金に貯めこむべきだと考える。
以上の理由により、絶望的な財政・基金計画に対して、異を唱えるため令和4年度中野区一般会計予算に対して反対をした。