スーパーでよく見かける、「森のたまご」や「伊勢の卵」など、
これらを製造販売するイセ食品株式会社(以下 イセ食品)とイセ株式会社が、会社更生法を申し立てられました。
機能性卵の先駆けとなった「森のたまご」。約15%
前会長であり、現在も「
そのキングが、
コロナによる外食需要減に伴う売上減。
会社更生法を申し立てたのは、債権者であるあおぞら銀行。
会社更生法を申し立てることができるのは、債権者や株主、
「申立者が、現経営者に『引導を渡す行為』」
とも言えます。今回は、実の息子が親に引導を渡す、
本稿では、イセ食品の事業承継について考察したいと思います。
“偶然”を“計画”に変革した人物
「卵はタンパク質に変わるものの中でコストが一番安い」
「人間は卵で育ってきた」
「戦後日本の成長原動力は卵」
このような思いのもと、鶏卵業を、
イセ食品が急拡大する以前、1963年ごろの卵流通は、問屋が、
「たまたま、その日に生まれた卵を集めて売る」
ものでした。ところが、スーパーが台頭し、同一品質・
温度や光、
「計画した日に卵を生ませて売る」
という卵流通へ変革します。
スーパーの拡大に伴いイセ食品の取扱量も順調に増加、
その後、1982年にアメリカへ進出。マニュアル活用とM&
「The Egg King in U.S:Japanese Entrepreneur」
(アメリカの鶏卵王は日本人起業家)伊勢彦信氏は故郷で卵王として知られ、
アメリカでもその称号が相応しい。 ミシシッピ川の東にある100の市場で1400万羽の鶏が産卵し ているISEアメリカは、 すでにこの国で最大の鶏卵生産者である。 By Kathleen Teltsch, Special To the New York Times July 19, 1986
卵で莫大な利益を得た伊勢氏。その使途は、
60億円のピカソが欲しくてたまらない
美術品に費やしたのです。伊勢氏は「貪欲」
ひとしきりオークションの話を語り終えた伊勢は、
実に楽しそうだった。(中略)現在、 60億円で売りに出されているピカソがほしくてたまらないという 。「でも、お金が足りんがです。 年よりは悲しいものでございますね」と、 富山弁でつぶやく伊勢は、今度は、心底寂しそうである。 (卵でピカソを買った男 実業之日本社2005年7月)
イセコレクションと呼ばれる伊勢氏所蔵の美術品は、ピカソ、
事業承継にあたっても、その貪欲さが垣間見えます。
「息子に『自分でつくった金は全部使って死ぬ』といったら、
悲鳴を上げておりました」 「彼には事業を残したらいいと思っています。その代わり、自分(
伊勢氏)の稼いだ分は絵を買って、その借金付きという形で…( 笑)」 (芸術のある国と暮らし|実業之日本社2008年4月)
「これだけの金は私に(美術品収集に)使わせていただきたい、
ということを条件に仕事を継いでいただく」 (卵でピカソを買った男|実業之日本社 2005年7月)
その息子俊太郎氏を
「(過去に引き継いだ、2人の社長と比べると)ましかな、
と評していた伊勢氏。
17年経った今、その息子に引導を渡されることになります。
親子の確執
一方、息子である俊太郎氏は、父をどのように思っていたのか。
親子関係について、雑誌「起業家倶楽部」
年を経るごとに、親父との確執が深くなる場合と、
そうでない場合とあるらしいけれど、どちらのタイプです? 俊太郎氏「前者ですね(笑)」
その後も、“親父は何でも口をだすもの、
当時から、親子双方、
次の経営者は誰か
俊太郎氏は、イセ食品で主に販売を担当しました。
「独立」したとはいえ、
法制度を「活用」した事業承継
俊太郎氏が行った会社更生法申立てに対し、
「会社の経営は順調で、債務超過になったことはなく、
と、不服申立ての抗告をする、としている伊勢氏。
経営者が強すぎた。親子の確執があった。
今回の会社更生法申立ては、法制度を「活用」
【参考・注釈】
※1 申立権者
資本金の10分の1以上の債権を持つ株主、
※2
今回の会社更生法申立てで採用したDIP (Debtor In Possession)型では、
・現経営陣に不正行為等の違法な経営責任がないこと
・主要債権者が現経営陣の経営関与に反対していないこと
などの要件を満たす場合、現経営者が、
※参考書籍
倒産の前兆 |SBクリエイティブ
卵でピカソを買った男 |実業之日本社(2005年7月)
カンブリア宮殿 村上龍×経済人|日本経済新聞出版社(2008年2月)
対話 芸術のある国と暮らし|実業之日本社 (2008年4月)