ここ10年前後で、都心や近郊住宅地といった、所謂住宅密集地の中で薪ストーブや暖炉を自宅や店舗、事業所に設置する例が徐々に増加し問題を起こす事実がある。
筆者は、薪ストーブや暖炉がそもそも普及などせず必須とも言えない、温暖地域に位置する大都市、市街区域、近郊住宅地における薪ストーブや暖炉の排煙問題を指摘する。
酷寒冷地、地方都市辺縁地域等の住宅閑散地、山間部等の過疎地域、住居間隔が相当に離れる別荘等の事例は、薪ストーブや暖炉の使用により他住民への悪影響を生じることは極小と思われ、これについては特に記す場合を除いて本稿以降では論じる対象としない。
薪ストーブや暖炉は、注意して燃焼させても煤煙臭気は必ず発生する。素人が簡素な燃焼炉で、排気が無臭無毒になる高温完全燃焼は不可能、煤煙臭気は消失しない。
低品質燃焼機器が住宅地内に設置されると、それまで清浄であった大気は一気に煤煙臭気に包まれる。木質燃焼煙も有害である。半年以上の長期間継続し、煙がくさいという迷惑だけの話では無い。
有害物質を含む煤煙悪臭は、それを焚く使用者だけでなく、周辺の不特定多数の住民に一方的に同意なく吸入され、健康上の問題を必ず惹起する。
煤煙悪臭による心身の健康被害が実害として最大の問題である。呼吸器系、循環器系、各種癌等の重大な疾患の発症促進及び増悪、煤煙による生活上の支障不便からくる精神面での悪影響が挙げられる。
実際の被害として他の被害者の報告も含めると以下が共通して発生している。今まで通常可能であった生活上当然の行動が煤煙により著しく制限される。
換気すらほぼ不能。洗濯物や布団などを外に干せない。家屋や屋外観賞植物等、自動車などの通常を超えた煤による汚損。薪割り時の騒音、道路の汚損行為。
最大の問題は、「清浄な空気を当然に吸うことができる最低限の人権」が不当に侵害されていると被害者は共通して感じている。
薪ストーブや暖炉の排煙問題を、実際に被害者となって以降調査で判明した項目を記する。
1. 被害者の苦境
- 何で今頃、清浄な住宅地で煤煙悪臭が明白な薪ストーブなのか。
- 行政に対処を求めるも「条例が無いから各自民事交渉を」と門前払い。
- 地元自治体と都道府県で、苦情のたらいまわしをされて泣き寝入り。
- 苦情を言うと逆切れされ、「エコで脱炭素、何が悪い」と言われる。
- 自治会の機能不全や報復を恐れ、誰も苦情を言い出せない。
2. 薪ストーブ暖炉の使用者の反論
- 規制する法や条例は無い。何で暖を取るかは個人の自由。
- 煙はお互い様。貴方は他人に迷惑かけないのか。
- 昔から存在、現代でも使用して何が悪いのかと苦情無視。
- 造園伐採樹木薪は無害で良い匂いだ文句言うな。
3. 薪ストーブ暖炉の施工、販社の宣伝
- 林業振興山林整備のために必要。
- SDGsに沿い炭素循環だから全く問題はない。
- 煤煙悪臭で実害レベルの迷惑など滅多に無い。
- 自然素材の木材は燃焼しても完全無害で環境汚染は全く無い。
以下は英国業界団体。日本の販社もこの姿勢が多数。
A review looking at studies into the contribution from wood burning stoves to indoor particulate matter, has found no scientific evidence for adverse health effects.
Read more here: https://t.co/scYasem37l#woodburningstoves #indoorairquality #particulatematter pic.twitter.com/honIesHtrH
— StoveIndustry (@StoveIndustry) April 14, 2022
4. 行政、議員、マスコミの反応
- 政党、各議員、自治体環境担当は、規制条例整備に及び腰。
- マスコミは取り上げず完全無視。スポンサーに配慮。
5. 欧米の動向。
- 欧米では木質燃焼は再エネから除外の流れ。
住宅地での薪ストーブ暖炉の使用による大気汚染の激化に、これをストップさせようという動きが各国で起き始めている。
木質燃焼煙の有害性を指摘する論文も複数発表されており、健康面で薪ストーブや暖炉の使用継続は問題であるとしている。
編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2022年4月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。