ウクライナと人類世界平和のため、先の大戦処理「以徳報怨」に学べ

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ウクライナが国際法無視のプーチン・ロシアの侵略を受けている。一日も早く収拾させるためにこそ我が国が先の大戦の敗戦後に、「侵略」したアジア諸国の我が国へのまさに「以徳報怨」の志により救われ援けられたことを範とすべきと、世界に伝え率先垂範すべきだ。

筆者は一臨床医療職であり、国際政治学者でも軍事専門家でも無い。しかし先の大戦で一族の総領となるべきだった先代を戦死させ遺骨も還らない遺族として、一族の柱を失った悲しみ苦しみを実感し続け、ゆえに先の戦史を学び続けてきた。毎日メディアに乱れ飛ぶ今後への想像憶測ではなく、一日でも早く再びウクライナに平和と安寧を取り戻すために、我々日本人そして日本国になにができるかを考えたい。

ウクライナをプーチン・ロシアが侵略している。ウクライナは主権国家であり侵略は国際法上認められない。まして市民を殺し民家公共施設を破壊等は、決して許されない戦争犯罪だ。毎日のように破壊された街や死に傷つけられた市民の姿が報道されるたびに心痛むこと多大である。「共感疲労」とまで言われ、つまりプーチン・ロシアは日本国民いや世界の市民までも、その侵略により心傷つけ被害を与え続けている。

先に筆者は「市民一人一人がすぐできるロシアへの抗議と制裁」として、「ロシア産水産品ボイコット、不買」をアゴラで提案した。しかし残念ながら社会は「回転寿司でサーモンやイクラが食べられなくなる」等と、第三次世界大戦につながるかもしれないという世界人類の危機に際してすら「今だけ金ならぬ快楽だけ自分だけ、三だけ主義」が垂れ流しである。実に恥ずかしい話ではなかろうか。

我が国は近年、年間1200億円ほどのロシア産水産物を輸入している。サケ、カニ、イクラ、ウニ、タラコ、ニシン、カズノコ等である。馴染みの食材であるが高級食材も多い。少しの我慢で巨額の外貨をロシアから取り上げ、戦費調達を阻止できる。フェアトレードといわずとも、侵略国家から喜んで贅沢高級食材を買って享楽に耽るのは不道徳ではなかろうか、そんなものが本当に美味しいと想えるだろうか?

そこで一つ問題がある。スーパーなどでタラコや身欠きニシンの原産地表示を見ると「ロシアまたは米国」という表記がほとんどだ。これでは産地がどちらか分からない。国は制裁措置さらに産地偽装防止策としても、原産国を特定一国に明記させるよう法改正すべきだ。

折しもオホーツク海についてのロシアとのサケマス漁業交渉が始まった。我が国は2021年度、ロシアに対し3億円ほどを支払うと協議を妥結している。オホーツク海のサケマスはほとんどがロシアの河川で生まれていると考えられるため、国連海洋法条約に基づき我が国がロシアに協力金を支払い、代わりに2050トンの漁獲量が認められた。

対して我が国のサケマス漁獲量の総量は2019年に6万トンである。サケマス類輸入は年間25万トンを超える。であればオホーツク海でのサケマス操業を一時中止しても我が国への影響は少なく、それを抗議とすることを考えても良いのではないか。国内関連業者に多少の影響は生じるが、我が国経済国力をしてすれば、特別法立法による給付措置等で十分救済可能なはずだ。

「戦争を仕掛け侵略する悪い国とは取引しない」「悪い子とは遊びません」その決意を示すことが、自国の権益のための戦争など認められないとロシアのみならず我が国近隣の覇権主義国家にも決然と示すことになるはずだ。

問題は西側諸国が結束しての経済制裁措置とウクライナへの各種支援により、ウクライナが善戦しロシアの侵攻を食い止めている、逆説的には戦乱が長期化し被害と犠牲が増え続けていることだ。

ここで我が国は、先の大戦後に迅速な復興を遂げ国際社会に復帰できた理由を思い返し、状況打開に貢献すべきだ。すなわちサンフランシスコ講和会議で我が国への賠償請求権を放棄し我が国の無条件の自由を認めるよう各国に訴え、我が国を賠償金から解放し国際社会復帰への道を開いたスリランカのジャヤワルダナ前大統領の演説と姿勢に学ぶべきだ。

報道される凄惨な破壊と犠牲者さらに拉致者が数万人単位で存在するとなれば、当然ロシアの賠償責任は戦後の大問題となるだろう。ここで第一次大戦で敗戦したドイツに対する巨額の賠償金が、ナチス台頭そして第二次大戦の一因になったことも思い起こす必要がある。その賠償金の完済は2010年だった。

そこで成長鈍化といえど経済大国の我が国が率先し、ウクライナの戦後復興を大規模に支援すると表明してはどうか。本来ロシアが賠償すべきものであるが、実質的に我が国ほかが肩代わりすることで、ロシア国民特に何の責任も無い将来世代の負担と怨みを減じることができる。ただしその条件として、ウクライナ固有の領土の回復保全とロシアの平和的民主的な政権への移行を絶対必須とするのは当然だ。食料自給率が低い我が国にとっても「世界の穀倉」と呼ばれるウクライナとの関係強化は食糧安全保障になり互恵的だ。

ロシア国内ではかつての我が国の大本営発表のように報道統制されていると聞くが、インターネット社会ではすべての情報を遮断はできない。停戦交渉も何度となく試みられ、ウクライナを支援する側の姿勢はロシアにも伝わる。仮にウクライナの一部を不法にロシアのものとしても、国際社会の経済制裁とNATO諸国の軍事的圧力は強化されロシアはひっ迫する、それとも? そう示すことでロシア国民自身が選択する動機を生じるのではないか。

筆者は90年代から訪問看護に携わってきた。当時は利用者に戦争経験者も多く、重い口から苦しく悲しい経験を聞くこともあった。そもそも筆者の先代たる人は遺骨すら無い、軍事機密のため戦没地すら分からず、弔いに行きようも無い。同じことがウクライナに、攻めた方のロシアにも起きている。戦争の犠牲は敵味方を問わない。

ならば一日一刻も早く戦争を終わらせ犠牲を止めるためにこそ、先の大戦の戦後処理に学ぶべきと、我が国は国際社会に訴えるべきではないか。

そして「以徳報怨」という言葉がある。先の大戦の終戦に際しての蒋介石氏の演説として知られ、ミュージカル「李香蘭」のラストナンバーとしても歌われている。怨みにもし「目には目」で報いれば怨恨の連鎖になってしまうが、徳と赦しを以て報いれば争いや怨みを終わらせることができる。孔子の言葉が出典とされるが、ジャヤワルダナ氏の演説と根を同じくして宥和的で穏和な仏教的あるいは多神教的思想こそが、多民族がひしめきながらも大きな戦争を域内で起こさなかったアジアの叡智であり人類世界平和の要諦となり得るのではないか。

ジャヤワルダナ氏の演説にインスピレーションを与えたのは、仏教学者の鈴木大拙氏だという。「大日本帝国議会が議決し昭和天皇の御璽を頂いた」平和憲法を持ちながら「戦争し易く」改憲を叫ぶ者ばかりで、世界平和を唱えリードする者が今や我が国日本に居ないのは、実に残念ではないか。

我が国には「ウクライナ女性の神主」が居ることにも触れておきたい。明治維新という薩長軍事クーデターは、廃仏毀釈を行い神道を国教とし国民に強いた上、神国日本等と戦争を煽った。しかし今も地方では神棚と仏壇が並んでいるように、本来神道も寛容で宥和的であり、だからこそ異国の人でも然るべく学べば神職に迎える。

さらには靖国神社には、大日本帝国軍人として遇された台湾朝鮮人他他民族も実は慰霊されている。天皇陛下が毎朝未明から国民と世界の安寧を祈られていることは心ある人の知ることだが、仏教のみならず神道もまた国境無く世界平和を希求していることも、日本人なら知って欲しい。我が国そしてアジアは、慈愛と平和への祈りを共有しているのだ。だから、成すべきことがある。

最後に本稿を書きながらジャヤワルダナ氏も触れた大東亜共栄圏、その過ちについてのメモを記す、世界人類が共栄する日のために。

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