「オーパスワン」で感じたマーケティングの圧倒的な力

カリフォルニアのナパにある有名なワイナリー「オーパスワン」を訪問しました。

特殊なルートで予約をしてもらい、ラッキーなことに、ワインが樽保管されている地下倉庫をガラス張りで眺められる特別な個室に案内してもらえました(写真)。

そこで、スタッフの説明を聞きながら、ヴィンテージの異なる3つのオーパスワンと、ヴィンテージのないセカンドワイン「オーバーチュア」の4種類のワインをテイスティングさせてもらいました。

凝縮感のあるカリフォルニアらしい赤ワインが、ヴィンテージによって少しずつ異なる味わいに変わることが実感できました。またオーバーチュアとの違いも興味深かったです。

アメリカのワインの一般的な特徴は、フランスのワインなどに比べ品質のブレが小さいことです。

特にフランスのブルゴーニュなどのは当たり外れが大きく、せっかく良いワインを買ってもがっかりすることが多かったりするものです。

カリフォルニアのワインは、安定感があり、安心してワインを買って飲むことができる強みがあります。

試飲の後に製造過程を見せてもらいましたが、ぶどうを選別する数億円すると言われる最新の機械が導入され、雑味のないぶどうだけが丁寧に選ばれているそうです。また室内はオフシーズンと言うこともありますが極めて清潔で、ぶどうの汚れ等が全く残っていません。

日本の日本酒の酒蔵に行くと、古い設備をきれいに清掃して使っているところがありますが、それとは別世界の近未来的なワインの製造施設でした。

オーパスワンは、既に世界的なワインブランドとして全世界で認知され、価格も今や通常ボトルは50,000円以下では買えない高級ワインとなっています。

そのブランド確立によるマーケティングの成功が、潤沢な資金をもたらし、製造者が納得できるだけの完璧な設備投資を可能にしています。

酒造りは造り手の芸術的なセンスも必要ですが、製造過程においては、工業的な品質管理のノウハウも重要です。品質管理に関しては、近代的な製造設備の導入が必要で、資金がないと十分な投資ができません。

高額でも販売できるブランドの確率したお酒は、製造業者の設備投資により、より高品質にしていくことができる。逆に、ブランドを確立できなければ、資金面で優位に立つことができず、十分な設備投資ができず、品質が向上しないというジレンマに陥っていく。

オーパスワンを見て、ワインをはじめとする嗜好品のブランド力確立の重要性を痛感しました。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年6月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。