気候変動に人類はどう対処していけば良いのか? ということで、CO2削減にお金をかけるよりは、そのお金を使って、災害に備える「適応」に優先順位があることを、多くの動画記事を通じて主張してきました。
その多くをアゴラでも動画記事を取り上げていただいています。例えば、
「気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか?」スティーブン・E・クーニン(著)
それらの本は、地球温暖化での気候変動に起因した災害、海面上昇や局所豪雨などには、人類は「適応(adaptation)」できるとされています。つまり、CO2削減にお金を使うよりも、「適応(adaptation)」にお金を使う方が優先順位が高いとの意見です。しかし、その「適応(adaptation)」の具体的な手法や思考は示されていません。
そこで、登場するのが本書。
その書評動画 はアゴラでは、まだ僕が執筆陣デビュー前だったので記事になっていませんが、ユーチューブでは多くの視聴者数を獲得しています。
【研究者の書評-29】岸由二(きし ゆうじ) (著)「生きのびるための流域思考」。地球温暖化に伴う局所豪雨や海面上昇に「適応(adaptation)」する防災の「地に着いた」サバイバル読本
著者は、まさにその「適応(adaptation)」を「流域思考」という古くて新しい考え方を使って、防災の重要さを示しています。まずは、「国道16号線」の西の地区、鶴見川流域の総合治水の実践を具体例をあげて、詳しく紹介。著者は1958年の狩野川台風から1982年の大水害までの5回の水害を現地で経験しているので、その総合治水の具体例には迫力があります。
そしてその「流域思考」を日本全国へ広げる抽象化を試みています。著者は、それぞれの時代に対応して人類は暮らしと生命圏を関係付ける基本地図のようなものを利用してきたとして、生命圏の危機や可能性に「現実的」な理解をして、共有していくためには、まず足元に開かれている雨降る大地の流域配置の地図に関心を持つことが重要だと主張しています。
個人的には、この地球温暖化に伴う予測される災害への「適応(adaptation)」を具体的に示した本書、そして「流域思考」の導入に、すごく共感しています。このような具体的な処方箋を示すことこそが人類の生命を守る要になっていると思うからです。
著者の岸由二氏は、これまた前回ユーチューブ動画で紹介した柳瀬博一氏の恩師です。
【研究者の書評-25】柳瀬博一 (著) 「国道16号線 -「日本」を創った道 -」
読み物としては柳瀬博一氏の著作の方が、より親しみやすく、「流域思考」の導入を勉強としてではなく、楽しめました。
この本を読んだ後に、岸由二 (著)「生きのびるための流域思考」を読むと、岸氏の提唱する「流域思考」がより深く理解できると思います。
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なんと、7月29日にオンラインで、その「適応」の具体的な提唱者の慶應義塾大学名誉教授・岸由二先生、そして東京工業大学教授・柳瀬博一先生との夢の対談が実現することになりました。というか、岸先生のオンラインセミナーにゲストとして招かれました。
鶴見川流域水マスタープラン(水マス)連続講座
水マス学校(第二回)地球温暖化豪雨時代にどうなる鶴見川
2022年7月29日(金)午後7:30-9:00
受講申し込みはこちらからできます。
40名限定ですが、無料ですので、ぜひ実際の「適応」を「流域思考」により実践していくお話の聴講をお勧めします。僕は、ブリスベン川の2011年と今年2022年の氾濫を経験していますので、その体験談も披露させていただきたいと思っています。
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動画のノギタ教授は、豪州クイーンズランド大学・機械鉱山工学部内の日本スペリア電子材料製造研究センター(NS CMEM)で教授・センター長を務めています。