解禁9年で比例区トップ当選者を出したネット選挙

前回参院選(2019年)の全国比例区で山田太郎議員が自民党の得票数第2位で当選した模様を「自民最強の組織票に迫る山田太郎議員のネット票」で紹介した。

今回の参院選では山田氏の推薦したマンガ家の赤松健氏がトップ当選を果たした。得票数は3年前の山田氏とほぼ同じ約53万票だが、2013 年、2016年、2019年と過去3回連続トップ当選を果たした全国郵便局長会の候補が41万票と、2019年に当選した別の候補の60万票から得票数を5割近く減らしたため、赤松氏がトップに躍り出た。

どぶ板選挙 vs ネット選挙

7月5日付朝日新聞 「(朝日・東大谷口研究室共同調査)どぶ板選挙?ネット選挙? 政党の情報発信、尋ねてみると」と記事は冒頭、以下のように指摘する。

固定の支持基盤がある政党は有権者と直接会うことを重視し、新たに国政に進出した政党はインターネットを駆使して支持拡大を狙う――。参院選候補者に情報発信の手段で重視するものを尋ねると、こんな傾向が見えてきた。

赤松氏以外は落選した候補も含めほとんどの候補者が支援団体を持つ自民党の候補者は、最も重視する情報発信の手段として、61%が「直接的な交流」をあげ、「SNS」は19%だった。対照的にNHK党は「直接的な交流」はわずか4%で、「SNS」が37%、「動画共有サイト」19%とネットを駆使している。

Ja_inter/iStock

NHK党から比例区で当選した「ガーシー」こと東谷義和氏はアラブ首長国連邦のドバイからのネットを通じた選挙運動だけで当選した。

初の国政選挙で議席を獲得した参政党はこの調査の対象となっていないが、当選した神谷宗幣氏は元ユーチューバーで、サポーターによるユーチューブへの投稿が「党勢拡大の一番の原動力」になったとしている(7月12日付産経新聞)。

ちなみに筆者は冒頭のアゴラへの投稿をSNSでも紹介した。今回も赤松氏に期日前投票した旨、SNSで紹介した。すると「いいね」や「リツイート」の数がいつものSNSへの投稿とは桁違いに跳ね上がった。郵便局長がどぶ板を踏んで集票する役割をサポーターのSNSによる拡散が担っているわけである。

 

成田悠輔イェール大学助教授は、ベストセラーの近著「22世紀の民主主義」でインターネットとSNSが民主主義の劣化をもたらしたと指摘する。

ネット選挙解禁が日本の民主主義の劣化をもたらしたかどうかは別として、朝日記事の「候補者全体で見るとSNSを重視しつつある。ネット選挙が解禁された13年の3%から今回17%に増えた」との指摘のとおり、選挙のネット化が着実に進んでいることは間違いない。