40年以上の歴史を誇る老舗のステーキ店が、家の近くにあります(写真)。カウンターの目の前で丁寧にお肉をお好みに焼いてもらえ、デザートにコーヒーまで付いている3000円のお得なセットを愛用していました。ところが、最近行ってみると、これが500円値上げされ、3500円になっていました。
ゴールデンウィーク明けから、500円から1000円値上げしたとのこと。3500円のランチでもまだ充分「価値>価格」ですが、この時期に15%以上も値上げする勇気があるのは、商品に対する揺るぎない自信があるからだと思いました。お店は相変わらず繁盛しています。
値上げと言えば、腰痛になってからお世話になっている整体の施術料も7月から1回6000円が8000円に値上げすると、通知が来ました。こちらは、何と一気に30%以上の値上げになります。定期的に通っている患者さんも多いようですから、かなりの負担増になる人も多いと思いますが、予約が取れないくらいの人気なので、こちらもサービスに対する圧倒的な自信があるのだと思います。
ビジネスの成功はライバルとの競争で比較優位をどこに作るかがポイントになりますが、その戦略は「価格競争で一番になるか」「商品・サービスで差別化するか」の2つしかありません。
例えば、資産運用の世界で言えば、投資信託の信託報酬を各社が引き下げているのは「価格競争」です。コストを下げてシエアを獲得して、規模の経済(スケールメリット)でビジネスを拡大しようという戦略です。
このような価格競争は、圧倒的多数を対象にし、大量に販売することができるコモディティ化したビジネスでは有効ですが、個別の顧客にきめ細かく対応していくオーダーメイド型のパーソナルなビジネスでは避けるべきだと思います。
同じ資産運用サービスでも、私がやっているパーソナル・コンサルティングは決して安い相談料ではありませんが、悩みを抱えた人が相談にやってきます。資産運用の知識は無いけれど、金融資産が数千万円という人たちには、資産運用の相談をしたくても安心して相談でき、その人にピッタリ合った納得できる解決方法を教えてくれる人をなかなか見つけられないという問題があるのです。
資産運用のパーソナルな悩みを解決するには、オーダーメイドできめ細かく対応できる極めて高品質なサービスが必要です。価格を低く設定して、それなりの汎用的なものを提供するよりも、「価値>価格」と思ってもらえるような具体的な成果の出る情報提供を目指す方が良いと思っています。だから1か月に2組限定にして、その分丁寧なサービスを提供し、アフターフォローもしっかりと行っているのです。
これ以上、数を増やして忙しくする予定はありません。それよりも利用される方の満足度を如何に高めるかを考えることを優先しています。
顧客が集まらないからと言って、価格を下げるのはパーソナルでオーダーメイド型なサービスであればあるほど、間違っている可能性が高いと思います。多くの場合、ビジネスが成り立たない理由は「価格が高い」ことではなく「価格に見合った商品・サービスが提供されていない」ことにあるのです。
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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年5月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。