リセッション?先行きをどう見る?:日本経済は爆弾を抱えている状態

目先の株価や為替の動向に目を奪われがちですが、日本は第3四半期、欧米では第4四半期に入り、7-9月の決算が10月半ばごろから聞こえてくる見込みの中、経済全体はどこに向かっているのか、考えてみたいと思います。

今の世界経済を俯瞰するとドル独歩高が招いた世界経済の不安増幅ではないかと考えています。ドルが主要通貨に対してどれぐらい高いかを見るにはドルインデックスを見るとわかるのですが21年春くらいまでは90前後だった指数が現在112程度になっています。つまり1年半弱で25%ほど切りあがっているのです。基軸通貨ドルが高いと他の国は通貨防衛のため、利上げをするため世界経済、特に新興国を中心に経済的ダメージが大きくなるというのがシナリオです。

FRBは未だに利上げの強気姿勢を崩していませんが、歴史的な水準から見るとドルは既にピークに近いところにあります。前回、ドルインデックスが山をつけたのは2002年初頭の120です。仮にFRBが11月に引き続き大幅利上げをすることになった場合、その頃までがピークでそこから急落する公算があります。為替はシーソーであり、米ドルに対してシーソーの反対側はすべての通貨のようなものですので反転すると一瞬のうちに逆回転が加速度的になる傾向があります。

例えばドルインデックスが歴史高値を付けたのは1985年2月の160ですが、その後、崩落、更に9月にプラザ合意がなされ高すぎた米ドルの是正策が打ち出されました。その結果87年秋には90を下回るまで下落しています。超長期で見るとドルインデックスは90台(90-100程度)が安定ゾーンですので2023年はドルは下落の年だと見込んでよいかと思います。

ドル高は企業の輸入品の仕入れコストが増加するため、7-9月の決算では在庫が積み上がり、小売業を中心に厳しい決算が予想されています。10-12月については感謝祭、クリスマスといった消費が刺激される時期を迎えますが、個人的には今年は例年ほど盛り上がらず、お財布のひもが閉まった状態になるとみています。中国の11月11日の独身の日のセールが口火になるのでその動向が消費者心理を占うことになると思います。

基本的に消費者が飛びつきたくなるような新製品を含めた消費財が少ないことも要因になると思います。コロナからは脱し、普段通りの生活に戻れた「宴のあと」状態だと断言してよいでしょう。ゲームもパソコンにシフトしているし、IT関係のガジェットも目新しいものはなさそうです。コロナ禍の際にモノはネットで十分に買ってしまった反動も出ていると思います。

よって真の意味でのリセッション入りの確率は高いとみています。アメリカでは既にテクニカルリセッション入りしてますが、政府高官を含め、リセッションではないとしています。ただ、7-9月の動向次第ではその雲行きは怪しく、FRBが強気になれる理由が欠落してくると思います。

また日経の記事にジャクソンホールでの会議で「財政の限界としてのインフレ」についてジョンホプキンス大学のビアンキ教授が提唱したとあり、私は気になっています。私は常々、マネタリストの限界ということを申し上げ、金融調整によってのみ経済や雇用が調整できると考えれるほど世界経済は単純ではないと主張してきました。つまり財政当局との足並みが重要だということでビアンキ教授の指摘もそのような内容だと理解しています。

例えばアメリカ政府はコロナ末期にバイデン政権のポピュリズムとしてバラマキ経済をしました。あれはアクセルを踏む経済なのですが、コロナから回復すれば人々の消費行動は自然と活発になるのに更に吹かせたので加速度がつきすぎたのです。よって現在のFRBの引き締めは政府部門と中央銀行のちぐはぐ感を一生懸命調整してきたといってもよいでしょう。

日本でもGoToを再度やっていますが、あれは本質的には悪手なのです。ただ、日本の場合、もっと問題なのは無担保の政府保証ローンをコロナ期に行い、その回収時期に入っていますが、返せないところが急増している点です。これは政府保証なので破綻すれば税金で処理するのです。さらに金融機関がそれらを通常ローンに転換したり追い貸ししているケースもあり、日銀が金融緩和政策を取らざるを得ないもう一つの理由がそこに隠されているとも言えます。日本経済は爆弾を抱えている状態です。

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英国のトラス首相が無茶な経済政策を発表したことでアクセルとブレーキを両方踏み、大混乱をきたしているのも全く同様のエラーです。つまり、金融政策は中央銀行だけがドライバー席にいるという認識を世界規模で変えなくてはいけないのです。政府部門とどれだけ波長をあわせ、連携できるか、であります。その視点を変えない限り経済のコントロールは今後、より一層難しくなるとみています。

では最後にスタグフレーションの可能性です。個人的には現状、完全なるスタグフレーションにはならないとみています。それは雇用環境が悪くなく、物価が上昇するもその中身は消費財よりもサービス財、サービス財より食糧エネルギーとまばら感があるためです。賃金上昇はほぼ一杯でこれ以上は上げられない雇用側の事情もあるとみています。物価もいずれピーク感が出るでしょう。

結論的には今年の後半には底打ち感が出ると思われ、株価が先行指標だとすれば7-9月の決算が出そろう11月上旬から中旬がボトム形成になる可能性はあります。但し、これはあくまでも世界で株価にインパクトがあるような事件や問題が起きないという前提です。その頃は中国もアメリカも政治的イベント通過でインドネシアでのG20が最後の山場という感じではないかと個人的には察しています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年10月3日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。