どう付き合うのか、新時代を迎えた中国:中国寄りのメディアへの危惧

カナダとアメリカの関係は奇妙なほどドライかもしれません。世界一長い国境を持つ両国間の関係はアメリカの51番目の州だというアメリカの声はこの2-30年はさすが聞かれなくなりました。しかし、経済的にアメリカとのリンクは強烈であり、文化社会情報的影響は極めて大きく、切り離すことは不可能です。

しかしそれでもカナダ国民がアメリカにおもねるような姿勢は一切見せません。あくまでも国境の向こう(South of the border)であり、カナダは制度的には英国連邦であり、世界からの移民を積極的に受け入れ、コミュニティのバランスを重視し、アメリカのようなメルトポット文化(アメリカに移住すればアメリカ色に染まるという意味)はなく、モザイク文化(それぞれのコミュニティが自立し、尊厳される社会)形成を是としてきました。

日経の「迫真」に「きしむ世界、揺れる新興国1 『米国の裏庭ではない』」とあります。アメリカ大陸といえば北中南米全部を指し、メキシコ、カナダとは経済的連携政策を進め、中南米はアメリカが強い影響力を持ってアメリカに同調する政策を何十年と続けてきました。これを「アメリカの裏庭」と称したのです。キューバ危機、ベネズエラ問題、コロンビアの麻薬問題でも深く関与し、パナマとは運河の運営という観点からアメリカに背を向けさせない政策を維持してきました。

しかし、ここにきて南米各国は左派政権が主力となり、ブラジルの大統領選もどうやらルナ氏が大統領に復帰する見込みで左派的で中国寄りになるのではないかとされます。それはアメリカが超大国としての威信を失いつつあり、コントロールできなくなっているとも読めます。いや、それだけではなく、中東は原油政策についてアメリカにいよいよそっぽを向き、地球規模の再編成の可能性が見えてきたのかもしれません。

16日から27日まで中国では共産党大会が開催されています。初日、習近平氏は1時間45分にも上る演説を行い、大国「中国」を意識する内容が盛り込まれています。メディアには台湾の統一について「決して武力行使の放棄を約束しない」と述べた点をトップニュースで報じていますが、中国研究者からすれば中華思想に沿ったものであり、特に驚くものではなく、当然の流れと受け止めていることでしょう。

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地球の歴史を見ると大国が周辺国や同盟国、連携国と強力な結びつきを通して地球規模の影響力を施すことが何度となく繰り返されてきています。我々はたまたま、アメリカの覇権という時代にいるだけの話でチンギス ハーンのモンゴルやローマ帝国、スペインの世界進出、フランスのアフリカへの強い影響、大英帝国など時代時代で必ず強者が支配する社会は存在していたのです。

近年の中国をみると人口、国土、資源、潜在的成長力をいかに高めるかに腐心し、2000年代初頭に北京オリンピック、上海万博で一定の経済的成長を成し遂げ、国家目標は第二ステージの大国としての箔付けにシフトしてきました。習近平氏がイデオロギーにこだわるのは第三ステージとして国内のグリップを強化し、アメリカの次の覇権を目指すことに他なりません。あと10-20年もすれば中国がアメリカの地位を奪う公算はあり得るように見えます。

もちろん弱点も当然あります。それは習氏がイデオロギー大国を作りつつあるものの、習氏が永遠にそのポジションにはいない点です。アメリカは最大8年で大統領は変わります。政党政治に基づく首相制度を取っている国ではどんなに長くてもトップ君臨は10年前後が精いっぱいで安倍氏やメルケル氏は近年では相当長い方でした。ところがロシアのプーチン氏は実質22年も君臨し、習氏はまずは15年間の地位を確実にしつつあります。これは国家元首が神聖化されやすくなる半面その反動も大きくなるという歴史には目をつぶっているともいえるのです。

より強大化する中国と日本はどう付き合うのでしょうか?冒頭申し上げたカナダとアメリカのような関係がもしかするともっともドライで摩擦も少ないのかもしれません。つまり、経済的結びつきに割り切り、政治や社会、情報についてはそれぞれを尊重し、侵害せず、ケースバイケースで検討することです。中国の拡大政策は当然ながら日本にも思想的に影響を与えようとするでしょう。我々はそれに対してきちんと判断し、日本としての自負を国民全員が持てるようにすることが大事だと考えています。

日本のメディアには中国寄りのものも見受けられます。アンチ政権の声が正々堂々とまかり通るのは国民への洗脳に近いものもあります。沖縄への中国の思想的影響は今後、深刻な懸念を感じています。思想の浸透は宗教と同じで弱いところから入ります。日本は沖縄をどう守るのか再度、真剣に考えるべき時が来たと言えるでしょう。

日本は台湾と強い友好的連携を進めています。しかし、中国が力による統一化を本気で行えば日本-台湾-フィリピンの第一列島線のど真ん中が抜けることになります。仮にそれが起きた時、日本は韓国しか同盟を結ぶ相手がいない点は外交的に思慮する必要があります。

日本の外交は確実に新時代を迎えます。そして影響力が衰えるアメリカに頼り続けるのもこれまた厳しくなると思えばいかに自立した国家を作り上げるか、これが日本の目指す道のりではないかとも考えます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年10月18日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。