芸術の都、パリ。この街にはルーヴル美術館を筆頭に、オルセー美術館、国立近代美術館などの公的美術館に加え、私立美術館も多々。
ここ数年は、コンテンポラリーアート系の美術館誕生が多く、従来から高い評価を得ている「フォンダシオン・カルティエ」に加え、LVMHグループが手がける「フォンダシオン・ルイ・ヴィトン」、ケリングの創始者でありアートコレクターでもあるフランソワ・ピノーのプライベートコレクション展示のために作られた「ブルス・ド・コメルス」もオープンし、パリはすっかりコンテンポラリーアートの中心地の一つとなった。
そんなパリには、1974年から毎年、大規模見本市会場グラン・パレで「FIAC(国際コンテンポラリーアートフェア)」が開催されており、コンテンポラリーアート関連イベントの大御所になっていた。ところが昨年秋、グラン・パレ利用権利の入札の際、今後7年間のグラン・パレでのイベント開催権を「アート・バーゼル」に奪われてしまい、パリのアート業界は騒然となった。
「アート・バーゼル」とは、スイスのバーゼルで1970年から始まったアートフェア。この地で世界的モダンアートの大コレクターとして活躍していたエルンスト・バイラーらが創立し、今では、バーゼルに加え、マイアミ・ビーチ、香港でも開催され、世界で最も影響力が高いコンテンポラリーアートフェアとして認知されている。そんな「アート・バーゼル」が、フランスの歴史ある「FIAC」をある意味”押し退け”、パリのコンテンポラリーアートシーンの主役になるというので、大きな話題となった。
パリの「アート・バーゼル」は、他の3都市との差別化を図り、「Art Basel Paris」ではなく「Paris+ par Art Basel(アート・バーゼルによるParis+)」という名称に。大注目の中、10月20日〜23日、グラン・パレ・エフェメール(パリオリンピックに向けてグラン・パレは現在リニューアル中。エッフェル塔のそばに期間限定の簡易会場グラン・パレ・エフェメールが設置されている)で開催された。
アートの最先端かつ中枢で活動する世界30ヵ国156のギャラリーがブースを構え、ぞれぞれ趣向を凝らした内装で、自慢の作品を披露・売買。前日と会期中の午前中は、コレクターとVIPのみに扉が開かれ、その他の時間帯は一般公開。
ケヒンデ・ワイリー、ジャン=ミシェル・オトニエル、アイ・ウェイウェイ、リ・ウファン、村上隆、草間彌生らコンテンポラリーアート第一人者によるものから、サイ・トゥオンブリー、アレクサンダー・カルダー、アンリ・マティスらモダンアート巨匠の作品まで、多種多様なアート作品が各ギャラリーに展示される様は圧巻。まるで何十個もの美術館が一堂に会したような稀有な空間が生まれた。
売買を目的にしたゲストはもちろん、最新アートシーンを体験したいという一般人も多く、会期中は常に大きな賑わい。マクロンフランス大統領夫妻も姿を見せた。
メイン会場であるグラン・パレ・エフェメールの他に、チュイルリー公園やヴァンドーム広場といったパリの名所にも関連インスタレーションがいくつも設置され、街を上げての世界が注目するアートフェアは、大いに盛り上がりを見せた。