長嶋茂雄記念岩名球場議案の上程前夜 ②

長嶋茂雄記念岩名球場
筆者撮影

本稿では、「長嶋茂雄記念岩名球場」誕生の経緯と、佐倉市による「球場改築予算」の策定の経過を概観します。

(前回:長嶋茂雄記念岩名球場「予算0円」の闇 ①

「長嶋茂雄記念岩名球場」誕生の経緯

岩名運動公園には、かねてから岩名運動公園野球場という名の市民球場が立地していました。この野球場の老朽化が激しく、雨漏りや柱の腐食が著しかったことから、今後も球場を存続させるならば改築が必要となりました。

さて、佐倉市は「世界的な野球人」である長嶋茂雄氏の生家があります。長嶋茂雄氏と言えば、老若男女誰もが知る日本でも屈指のスーパースターであり、「日本の誇り」です。

そのような背景から、この市民球場を、長嶋氏の名前を冠した立派な野球場として生まれ変わらせようというプロジェクトが佐倉市で立ち上がりました。

結果、本件は佐倉市議会でも審議され、2013年の6月定例会では「岩名運動公園野球場」から「長嶋茂雄記念岩名球場」に名称変更する条例案も「全会一致」で可決されました。この結果をうけ、当時の議会だよりでは、さくら会の「今後、名前にふさわしい球場にしていくことが求められる。」というコメントを確認することができます。

2013年8月1日号:広報佐倉

2013年8月1日号:佐倉市議会だより

2013年佐倉市議会だより さくら会の「会派等の意見」

長嶋茂雄記念岩名球場か?市民球場か?

人口減少が続く自治体において、老朽化が激しい市民球場の在り方としては、最小限の規模の球場として改築するという方策が一般的です。そのメリットは、言うまでもなく「市民球場の機能は維持しつつ、予算を最小限に抑え球場を維持できる」ことです。

しかし、当時の佐倉市議会は「長嶋茂雄氏の名前を冠した球場として作り変える」という意思を、全会一致で示しました。

佐倉市と議会がそのような決意をした以上、さくら会が意見表明した通り、球場をその名に恥じぬものにすることは、市民のみならず我が国の国民から佐倉市に託された使命といっても過言ではありません。

球場改築予算の検討経過と国の交付金7億円

これ以降は、当時の議会議事録を追いつつ経緯を説明します。

佐倉市は詳細を詰め、当該球場の建築予算の実施計画上の総額を、当時の佐倉市としては目いっぱいの約8億円と算出しました。

その後、球場の改築について千葉県高校野球連盟(以下「高野連」とする)と協議をしたところ、球場の名称に長嶋氏の名前が冠されるのであれば、せめて夏の高校野球地区大会予選ができる球場にできないか、という話が持ち上がりました。

高野連の要望に対応するためには、各校の応援を勘案すれば8千人は収容できる球場とする必要がある他、外野スタンドの目隠し擁壁工事、硬式用防球ネットを予定より高く張る費用などが必要であることが判明しました。

特に、当初計画では一塁側と三塁側の客席部分は芝生を想定した設計となっておりましたが、8千人を収容することができる球場とする場合、芝生ではなくスタンド座席を新設する計画に変更する必要がありました。

もしそれだけ大人数を収容できる球場にすることができ、目隠し擁壁を設置することができれば、野外コンサート等「野球以外のイベント」も開催できるようになります。そうなれば、経済波及効果も期待できます。

そこで佐倉市は、その規模の球場を作った場合の予算を改めて算出するのと同時並行で、長嶋氏の名前を冠する球場を作ることを前提に国との交渉をすすめました。結果、改めて算出した建築費総額約15億円のうち、約半額である7億円を国費(社会資本整備総合交付金)として賄うという内示を、国から取り付けたのです。

以上のような背景から、執行部は諸々の設計変更を勘案し、さらに詳細を詰めた後、最終的に2015年の6月には、当球場の改築予算を総額約16億7,000万円として議会に上程しました。

ここまでは、行政によるごく普通の「公共施設の予算の検討」です。

この後、佐倉市議会の主要会派であるさくら会等による「改築予算0円」動議の可決という、信じられない議決がなされることになります。

(次回へつづく)

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